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 「ワタシ、我々が呼ぶところの〈名の無きものども〉に属してる。それもまた友愛団で、二千年続いてる。ワタシ他にもふたつの友愛団に属してる。ワタシ中国では家族と親族のお陰で重要人物だからネ。だけどこれは〈名の無きものども〉の友愛団に関係あることだヨ。ワタシの息子、少しやんちゃ。彼、英コックの酒飲む、そして酔って帰る、そして〈名の無きものども〉友愛団の三人が、ワタシと秘密の話しするネ。だけど彼酔って気にしない。彼入って来て座って笑う。総裁のナンバー7、彼に出て行くよう命令する、すると彼親指を自分の鼻に押し付ける———で! 総裁大いに怒る。だけど堪える。ワタシ友愛団の古株で、その若い男ワタシの息子だからネ。だけど友愛団の者じゃないネ。

 「総裁もう一度ワタシの息子に行くように命令する。そしてワタシの息子、大いに酔って悪い状態、彼」(その男は体を折り曲げ、その恐るべき詳細を文字通り吾輩に囁いた)「彼、総裁の弁髪引っ張る、そしてその弁髪偽物、ワタシそれ知らなかった。それで弁髪取れてワタシの息子の手の中、総裁剥き出しでワタシ達の前。

 「総裁直ちにワタシの息子殺したい。だけどワタシ彼に大いなる演説して、充分説き伏せた。それで彼先ずは若者をシラフにさせて、その後で二千年続いてる〈名の無きものども〉の友愛団の〈第二等六十人会〉で試させることに同意する。

 「それが昨日、そして連中が去った時、ワタシ息子をシラフにさせて彼を入れる為の木乃伊のケースを用意する。彼シラフの時、ワタシ彼に言う、すると彼酷い恐怖で殆ど死ぬ。連中、彼の心臓を取って、我等が大ホールの扉の上の金の球の中に吊るすだろうからネ。全中国の中でもどれよりも古い友愛団の総裁にあれ程無礼を働いたと云うこと憶えてるからネ。

 「ワタシ息子に話した時、ワタシ彼の為の脱出計画したヨ。ワタシ彼に強い阿片飲ませる、そして彼木乃伊ケースに入れる。

 「夜、連中ワタシの息子の所へやって来る。だけどワタシ、彼いないと言う。彼また飲みに出た。連中、ワタシが彼隠してると言う。若し隠してるのを見付けたら、連中偽者の兄弟として、ワタシの腸〔はらわた〕出す。ワタシ連中に家を調べろと言う。連中すっかり家を調べる、だけど木乃伊ケースのこと考えない、木乃伊ワタシの店に長い、それに本物だからネ。だけどワタシ、息子の為にケースを用意した時、木乃伊焼く、木乃伊五千ドルするネ。だけどワタシ構わない、息子を救う為だからネ。

 「連中、フリスコの酒場を全部探して廻る兄弟達がいる。二千年続いてる〈名の無きものども〉の総帥に無礼を働いたワタシの息子を探すのに、百人、二百人いるよ。だけど連中、彼を見付けない。

 「それから連中、見張りの為にワタシの家に兄弟ひとり、通りに兄弟ひとり置く、これでどうやってワタシ息子の命救えるか?

 「そしてアナタ来る、センチョ兄弟、そしてワタシアナタの外套に印見る、そしてアナタ英コック人、ワタシ新しい勇気出る、そしてワタシアナタに話す。これで全部ネ」

 「いやはや!」と吾輩は言った。「〈名の無きものども〉のことは聞いたことがある。しかしまさか連中のおっそろしく年を喰った総裁の弁髪を引っ張ったからと云って、ひとりの若者を殺したりはしないだろう?」

 「シーッ、センチョ兄弟!」とその男は言ったが、恐怖に顔を白くして、先ず自分の後ろの扉を、次に外の扉口を凝っと見詰めた。「そんなコト言わない、センチョ。アナタもう行く、ワタシアナタと話すの、連中に見られたくない。ワタシ今夜暗い時にハコっこ送る」


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