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 「センチョ、これは!」と彼は言った。「ワタシもだヨ!」彼はそして自分の長衣の上着の垂れ縁を傍に引き、同じものを吾輩に見せた。

 「そんなものは二ドルも出せば何処でだって買える」と吾輩は言って、彼の目をぴしゃりと睨め付けた。吾輩がそう言うと、彼は吾輩が送った合図に応えた。

 「兄弟よ」と彼は言った。「我が苦難にアナタを送って下さるとは、神は全く以て善なる哉」それから彼は吾輩の二番目の合図に応えた。

 「兄弟よ」吾輩は自分自身の兄弟に話すのと同じ様に話し掛けた。「このことをすっかり証ししてしまおうではないか」そして一瞬の後には、吾輩の疑いは最早跡形もなくなっていた。一部中国人、一部黒人、そして一部が他のものであるこの異邦人は、吾輩も属している同じ友愛団の一員であったのだ。同じく我が兄弟であるところの者ならば、それを名指しすることが出来よう。

 「さて」と吾輩は言った。「すっかり話してくれ給え。そして若し君を助けることが普通の良識に反するものでなければ、君は吾輩を頼りにしてくれていい」吾輩は彼を元気付ける様に笑いかけた。

 その男はがっくりと崩れ落ち、その緩い袖に顔を埋めて暫しの間泣いた。

 「アナタ、ハコっこ運ぶ、センチョ兄弟」とやがて彼は言った。「ワタシ今この瞬間に千ドルアナタに支払うネ」

 「いいや」と吾輩は言った。「先にすっかり話を聞いてからだ。若しそれが殺人であれば、君の側に言い訳となる様なものがない限り、吾輩は君を助けることは出来ん。若し君が人を殺したのであれば、君はもう吾輩を兄弟と呼ぶことは出来んからだ」

 「ワタシ人殺してない、センチョ兄弟」と彼は言った。「全て話すネ。ではアナタ、ハコっこを千ドルで運ぶネ?」

 「この件に関して何ひとつ物騒なことをしていなければね」と吾輩は言った。「必要とあれば、吾輩は君の箱を地獄へまで持って行って、また持ち出して来よう。それと我々の間で金の話はなしだ。さ、始めてくれ」

 彼は吾輩に御辞儀をすると、吾輩を連れてカウンターを回った。そこには長い箱があって、巨大な代物で、頑丈な作りをしており、蓋には蝶番が付いていた。彼は蓋に手を掛けると、それを持ち上げた。

 「木乃伊だ!」吾輩は叫んだ。その物体は吾輩の目の前に、彩色された長い入れ物の中に、飾り気もなくそこにあった———それはこれまた巨大な男か女であったものに違いない。

 「ワタシの息子ネ、センチョ兄弟」とその中国人は言った。

 「何だって?」

 「彼、そこの」と中国人は言った。

 「何だって! これが?」吾輩は再度尋ねて目を見張った。

 彼は頷き、不安げに店の外にちらちらと目を遣った。

 「死んでいるのか?」と吾輩は言った。「防腐処理をしてあるのか?」

 「いいや、センチョ兄弟」と彼は言った。「木乃伊のケース、空。ワタシの息子、その下、隠れてる。彼、ワタシが与えた大量の阿片で眠ってる。ワタシ今夜彼をアナタに船積みする。先に理由を話すネ———


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