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神は種を蒔かれた。そは美を求めて乗り出した。
あらゆる魂の目的は、その花の美にこそ在り。



 高貴な出の若者が居て、殺すことを良しとしなかった。或る敵が彼の同胞に対して立ち上がり、彼の友人達は皆兵士になった。だが若者は嘆き乍ら家に留まり、独り野を彷徨った。しかし敵は家畜や収穫物を貪り、人々を殺戮した。若者は疑念に囚われ、心の安らぎを失った。そこで彼は神に問い掛けるべく山に登った。とうもろこし畑や小屋や街が遠くに見えた。そして彼は言った。「私が魂を失うことになっても、我々は人々を救わなくてはならない」

 そこで彼は重い心の儘山を下り、兵士になった。彼は部下達を戦いへと連れて行き、部下達は殺されて行った。だが戦いの後、彼は皆から離れて地面に身を投げ出し、殺された者、負傷した者の為に泣いた。彼は叫んだ。「おお、神よ、私を殺すことから解放して下さい、私の魂は病んでしまいます」

 だが彼は再び戦いに戻り、激しい殺戮が繰り広げられた。ことが終わった時、彼は死者達の中に立ち尽くして考えた。彼は言った。「死とは何か? 死の中にどの様な悪があると云うのか? 死は、深い眠りである、そして痛みは夢である。命あるところには争いがあり、それ故に魂は成長した。あらゆる嘆きの終局は神である」

 その後何度も彼は自らに強いて部下達を戦いへと連れて行った。彼は人々と大義のことだけを考え、死者達のことは見ないようにした。彼は勇気と思い遣りのある行いを示し、愛された。

 或る日、部下達を率い攻撃の指揮をしていた時、一人の男が従わなかった。彼は攻撃するようその男を急き立てた。だが男は言った。「兄弟よ、殺すのは恥ずべきことだ。死ぬ方が増しだ」その士官は他の者達が堕落し、大義が失われてしまうことを怖れた。そこで彼はその男を殺したが、彼は嘆いた。

 士官は戦いに赴き、勝利を齎した。何千人もの敵が殺戮され、あっと云う間に追い詰められた。若者は偉大な指揮官となり、あらゆる兵士達から讃えられた。だが彼は大義の為に生きたのだった。そして彼は嘆いた。

 或る闇夜に、彼の友が死して運ばれて来た。そこで彼は雨風の中出て行って、友のことを考えた。雨粒が彼を打ち、晴れた空は見えなかったが、彼は星々のことを思い出し、切望した。大風が吹いて木々を撓ませ、葉や小さな枝々を引き裂き、彼の顔を笞打った。彼は神に向かって声に出して叫んで言った。「私に何をさせたいのですか? 殺すよりも死ぬ方が遙かに増しだ」

 朝、敵の若者が彼の前に連れて来られた。スパイであると云うことだった。だが彼は若者の目を覗き込んで、そこに何の策略も無いのを見て取った。若者は言った。「人殺し! 僕の仕事は、人々の間に平和を打ち立てることだ。人々は戦争を呪っている。人々は、貴様を呪っているのだ」だが士官は彼を解放するように命じ、彼に言った。「兄弟よ、殺すことは恥ずべきことなのだから、死ぬ方が遙かに増しだ」そして士官は外に出て、自ら命を絶った。



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