前の頁へ
1 2 3




 「今や我々にははっきりと見える。我々は恐怖している———死ぬ程恐ろしい。奴等は予想していた通りのものだ。だが我々の誰ひとりとして吐き気を克服することが出来ずにいる。奴等は森の前の平地を横切って群がっている。逃げていれば良かったのだが! しかし何処へ? 全世界が征服されてしまっているのに? まるで無駄だ。ここには我等の種の最後の前哨地があるが、我々は身を護る術を持たない。我々の種族は一掃されねばならないのだろうが、若し我々の父祖が奴等の最初のものを破壊してさえいたら! 或いは我々が古き死の機械を持っていたら………だが、それらはこの種族と同じ様に、分壊の憂き目へと陥ってしまったのだ。

 「遠くの騒ぎが聞こえる。沸き立つ壁が近付いて来る。太陽は低く、鉛色だ。奴等は何千もいる———もう近くだ。恐れていた通り、我々の矢は殆ど効果がない。

 「我々の仲間が互いに殺し合っている。慈悲深い行為だ。奴等が濠を越えた! 濠を自分達の躯で埋め尽くして、他の者がその上に流れ出して (、、、、、 )いるのだ。

 「奴等が壁を登って来る (、、、、、、、、、、、 )!」





 耐え難い恐怖の絶叫がひと声、彼から発せられた。それから金属のヘルメットが急速に鈍い色調に褪せてゆくにつれ、彼は静かになった。

 彼のあちこちには奇妙な傷跡が幾つも現れており、 その表情は実にショッキングなものだった。


前の頁へ
1 2 3


inserted by FC2 system