「今や我々にははっきりと見える。我々は恐怖している———死ぬ程恐ろしい。奴等は予想していた通りのものだ。だが我々の誰ひとりとして吐き気を克服することが出来ずにいる。奴等は森の前の平地を横切って群がっている。逃げていれば良かったのだが! しかし何処へ? 全世界が征服されてしまっているのに? まるで無駄だ。ここには我等の種の最後の前哨地があるが、我々は身を護る術を持たない。我々の種族は一掃されねばならないのだろうが、若し我々の父祖が奴等の最初のものを破壊してさえいたら! 或いは我々が古き死の機械を持っていたら………だが、それらはこの種族と同じ様に、分壊の憂き目へと陥ってしまったのだ。
「遠くの騒ぎが聞こえる。沸き立つ壁が近付いて来る。太陽は低く、鉛色だ。奴等は何千もいる———もう近くだ。恐れていた通り、我々の矢は殆ど効果がない。
「我々の仲間が互いに殺し合っている。慈悲深い行為だ。奴等が濠を越えた! 濠を自分達の躯で埋め尽くして、他の者がその上に流れ出して
いるのだ。
「奴等が壁を登って来る
(!」
耐え難い恐怖の絶叫がひと声、彼から発せられた。それから金属のヘルメットが急速に鈍い色調に褪せてゆくにつれ、彼は静かになった。
彼のあちこちには奇妙な傷跡が幾つも現れており、 その表情は実にショッキングなものだった。