救護所への道
(The Road to the Aide Post,1916)



 ステープルドンの散文形式で書かれたフィクションとしては最初期に出版されたものである。主人公が、戦争に際して戦うべきか否かと自問する様が描かれているが、単純な戦意高揚ものとは一線を画す、深夜の真摯な瞑想の様子が胸を打つ美しい幻視譚である。

 ステープルドンは実際に第一次大戦中は兵役を拒否してクエーカー教徒の救急隊の一員として働いており(1915-19)、本作は彼自身の実体験をその儘描いたものか、少なくとも心理描写に関しては彼自身の体験が色濃く反映されているのと見るのが自然だろう。ここで語られている「新しい展望」の具体的な内容については、例えば後の倫理的著作やステープルドン自身のその後の足跡から推測するしか無いが、何れにしろそれが困難な道程を要求するものであったことは想像に難くない。


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