『闇、そして光』
(Darkness and the Light,1942)


解説

 二度目の大戦中にステープルドンがMethuenから出版した作品で、1974年にHyperion Pressからリプリントされるまでは一般に入手困難な作品だった。

 記述のスタイルは『最後の、そして最初の人類』と同じで、精神投影を用いた「未来からの回想」と云う疑似歴史書的な形で、現代(1930-40年代)から始まる人類の壮大な未来史を描いている。展開は『最後の-』と比べてややアップテンポで、ボリュームはそれ程ないが、この作品の特色を成しているのは、描かれる未来が「ひとつではない」ことである。今日的に言えば「パラレルワールドもの」にでも属するのかも知れないが、途中から人類を待ち受ける可能性をふたつに分け、「闇」「と「光」、異なるふたつの力のどちらが優勢になるかによって分岐させ、最終的にはそれぞれ絶滅と更なる進化と云う対照的な段階に至らせている。大まかな構成は以下の通りだが、人類が一文明単位で飽きもせず没落と擡頭を、破壊と生成を繰り返してゆく様は正に圧巻。超個人的な視野に立ったその筆致は、SF作家は愚か歴史家でさえ、今だに余人の追随を許さないものである。

 第1部、ドイツ、北アメリカ、ロシア、中国、チベット等、幾つもの帝国が版図を広げ、栄華を誇っては衰退する。

 第2部は闇の歴史。チベットが歩みを間違えて以降、人類は曾てない戦争、世界帝国の誕生、経済の衰退や人口の減少等を経て滅亡への道を辿り、その後太陽が新星化する。

 第3部は光の歴史。戦争の後に新世界秩序が誕生、何度も危機を迎え乍らもその都度進歩と成長を繰り返し、絶望と希望を抱えつつも、何処とも知れぬ未来へと向かって、新たなる段階へ進んでゆく。


以下の文献、レビューも参照

  Darkness and the Light (Hyperion Press,1974)



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