中国人骨董商事件
(The Case of the Chinese Curio Dealer,1917)



 他の殆どのホジスン作品の登場人物達と同じくゴールト船長もまた、その容姿や経歴等については詳細が明らかにされていない。今回訳出したのは、そんな彼の知られざる一面がちょっぴり(本当にちょっぴりだけ)明らかになる話である。その儘昔の映画にでも出て来そうなおかしな英語を喋る中国人が相手とだけあって、ゴールト船長もそのB級的な魅力を存分に振りまいてくれている(筈である)。

 今回の訳出は川流の熱心な要望によるものである。数あるホジスン作品の中でも選りに選ってこんなコミカルなものを最初に紹介することになったのはそんなワケである。翻訳作業は、先ず黒森が試訳を作成し、それに川流が「演出上の修正」を施し、黒森が再度それをチェックして仕上げを行うと云う形を採った。普段ならば黒森が絶対使わない様な「吾輩」と云う一人称を使っていることを始めとして、奇妙な表現が多々見受けられるのはその所為である。若し違和感を覚えた方がおられたら御容赦願いたい。

 因みに蛇足になるかも知れないが、訳の過程で話し合う際、川流が「ゴールト船長のCV(キャラクターボイス)は羽佐間道夫」と言うと、黒森は川流の「演出」をすんなり受け入れてくれる様になった。ジョージ・ペパードやピーター・セラーズなどがゴールト船長役をやったら面白いのではないかと川流は思っている。これまたイメージと違っていたら申し訳ない。


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