『選択の謎』より
葬送ポープ・フュネブル
(Pompe Funebre, from The Mystery of Choice,1897)



 短編集『選択の謎』(1897)の中の一篇。余計な会話がない分、チェンバースの腐臭漂う叙情性がよく出ている佳品である。*忌まれるものを肯定し、剰えそこに〈美〉を見い出すこと、これは世界を総括的に眺める視点に立とうとする時の重要な条件となる。だがそこに生じる軋轢に苦悩することもまた、彼等に定められた宿命なのだ。

 作中に登場する〈紫の皇帝〉は、〈赤の提督〉、〈黒の神官〉等と並んでシリーズ中最初の5篇を繋ぐ登場人物達のひとり。名前の由来は"Apatura Iris"と云う巨大な稀種の蝶の俗称からで、またリース・トレヴェクは彼の姪にあたる。

 尚、白い影と云うモチーフは「〈白の影〉」で再び用いられることになる。



*シデムシを扱った他の作家の作品としては、例えば以下のものがある。
A.Derleth,"Sexton, Sexton, on the Wall",(初出 Weird 1953/1月号)
 「しでむしの唄」(矢野浩三郎訳、『ミステリマガジン No.195』、1972/7)
 「しでむしの歌」(矢野浩三郎訳、『怪奇と幻想2 超自然と怪物』、角川文庫、1975)
 「シデムシの歌」(森広雅子訳、『淋しい場所』、国書刊行会、1987)
 「しでむしの唄」(矢野浩三郎訳、『幻獣の遺産 憑依化現』、北宋社、1994)
 「シデムシの歌」(矢野浩三郎訳、『恐怖と怪奇名作集1 シデムシの歌』、岩崎書店、1998)
水木しげる「墓守虫」(初出『漫画天国』1966/7/8号)
 『ホラーコミック傑作選2 畏悦録〜水木しげるの世界〜』に収録(角川ホラー文庫、1994)




本文へ

inserted by FC2 system