ロバート・ヘイワード・バーロウ
(Robert Hayward Barlow,1918-1951)


生涯

 バーロウの生涯については余り詳しいことは知られていない。1931年、当時僅か13才の時にH.P.ラヴクラフトと交流を始め、彼の助言を得乍ら短い小説作品等をものする様になる。作品は次第に同人誌(アマチュア・マガジン/ファン・マガジン)に掲載される様になり、37年にラヴクラフトが亡くなり、フロリダへ引っ越した後も執筆活動を続ける。43年にはメキシコに移住し、48年にはメキシコ・シティ大学の人類学部長となるが、そこで中米人類学に於ける開拓者的な業績を残す。39年にローレンス・ハート(1901-1996)等の「活動家」詩歌運動に出会い、詩歌に傾注する。1951年に自殺。



解説

 バーロウの作品が出版されたのは主に同人誌上に於てのことなので、ラヴクラフトと合作した短編数編を除いては、長らく一般には読むことが出来なかった。2002年にHippocampus Pressから未発表のものも含めた傑作集が出たことによって、ようやくその詳細な姿を知ることが出来る様になった。

 ラヴクラフトとの合作作品については、これらにどの程度までラヴクラフトの手が入っているかと云うことについて一時研究者達の間で意見が分かれた様であるが、今では殆どバーロウのオリジナルと言ってよいと云うことで一致している。彼の幾つかの作品に見られるラヴクラフトとの大きな相違点のひとつは、あらゆるものが死に絶えた情景の描写である。非-人間中心的な宇宙観を表現するのに、ラヴクラフトは屡々疑似歴史書や一人称による報告と云う形式を採るが、バーロウのそれは風景描写である。彼は舞台に目撃者を登場させず、知性体ではなく自然を主役として、それが衰微してゆく様を感傷少なに淡々と綴るが、これはラヴクラフトには見られない特徴である。避けることの出来ない絶滅の過程を黙々と執拗に記述してゆくバーロウの筆致は、人間的視点との対照を用いないと云う点で、ラヴクラフトよりも没人間的であるとも言える。但しその分ストーリーテリングとしては起伏に欠けており、人によっては退屈で冗長と取るられるかも知れない。この意味では(詩歌については今は詳細を省くが)、バーロウのイマジネーションは小説よりも寧ろ詩向きのものであったと言えるだろう。



邦訳一覧

 '"Till A'(All) the Seas"'(ラヴクラフトとの合作、1935)
  「海の水涸れて」(福岡洋一訳、『定本ラヴクラフト全集9』、国書刊行会、1986)
 'The Night Ocean'(ラヴクラフトとの合作、1936)
  「夜の海」(片岡しのぶ訳、『定本ラヴクラフト全集6』、国書刊行会、1985)
 'The Battle That Ended the Cuntury'(ラヴクラフトとの合作、1944)
  「新世紀前夜の決戦」(福岡洋一訳、『定本ラヴクラフト全集7-1』、国書刊行会、1985)



以下の文献、レビューも参照

 Eyes of the God(2002)
 The Loved Dead: And Other Revisions(1997)
  バーロウの短編が2編収録されている。
 Great Weird Tales(1999)
  "A Dim-Remembered Story"が収録されている。



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