海の獣



 これまた或る音楽から想を得た幻想譚。ここに登場する「獣」は以前紹介した『獣が死んだ夜』の獣とは全くの別物らしい。推測するに黒森が用いる「獣」と云う単語は、どうやら固有名詞等ではなく、また完全に一般名詞と云う訳でもなく、やや擬人的な観念を描きたい時に用いる記号の一種なのだろう。一時は暗黒寓話ものに変えようかと思って途中まで書き掛け、結局気分が乗らずに元の路線へ戻したらしいのだが、話を聞いてみるとこちらも結構面白そうで、原稿を破棄してしまったのが惜しまれる。その内また書き直してみろと焚き付けるのもいいかも知れない。



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