水晶の色彩



 黒森が或る時見た夢を下敷きにして書かれた幻想掌編で、多少はバローズやカットナーも参考にしているが、全体的にラヴクラフトの影響が顕著である。如何にも勿体ぶった仰々しい文体で綴られているところが若書きを感じさせるが、著者の基本的な立場が割と素直に描かれていて好感が持てる。元々実際に見た夢を敷衍しただけあって全篇夢の論理で貫かれており、当人の言に拠ればラヴクラフトの「夢の国もの」と同じく、他の作品で描かれることになる現実世界の事象と不可思議な関連を有していることになっているそうである。


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