逆巻く怒りに胸塞がれて



逆巻く怒りに胸塞がれて あゝ 私の恋は燃え落ちる
  何と云う愚かしさ 何と云う無駄 そして 何と云う悪意!
    恐怖の中に精一杯の嫌悪を込めて 私は声を張り上げ悪罵と呪詛を撒き散らす
      虚空の中に吸い込まれて行くその空しさ………!
        日に千遍の退屈 日に千遍の悍ましさ 日に千遍の殺人衝動
          見よ 見てみろ この下らなさを
            この下劣で 無意味で 痛ましく不愉快な國を!
              歯車が噛み合っていない この途方も無く馬鹿馬鹿しい苦痛!
                肉の呻きの中に 私は独り取り残され
                  ねっとりと温かく 何もかも腐らせそうな泥濘の中に 首まで(うず )まり
                    婢女の唾を吐き掛けられ 星々に見捨てられ
                      鼻息荒く 悲憤に悶え続ける

今日もまた日が明ける
  だが あゝ 何の為に?
    どんな新しい一日が その先に開けているだろうか?
      どんな変化の兆しが その頭上に輝いていると云うのか?
        喜びの道は閉ざされている訳ではない
          だが そこには 今や そこら中に石ころが転がり 雑草が高々と生い茂り
            行く手を阻む あらゆる細々としたことどもが けたたましい笑い声を上げている!
              私には憤るべき十分な理由が有る
                そして 彼奴等 (きゃつら )にもまた 私を憎むだけの十分な理由が有る
                  ならば 予想され得る破局へ向けて
                    闘争の為の宣戦布告を
                      今 ここで 喚き散らそう
                        苦渋に満ちた非難を しっかりと胸に灯して
                          この不様で醜悪な旅路を 一目散に転がり落ちて行こう

    滑稽だろうか?―――確かに滑稽だ 狂った儘進み続ける時計の様に滑稽だ
      だが私は濁れる湖の底に眠る屍体ではない!
        緊縛衣に全身を拘束されて 口から泡を吹く忘却ではない
          狂って欲しいならそう言えばいい 私は後脚で砂を掛けてやる
            肩を組んで敗北の旗を振って欲しいのならそう言えばいい 私は首を引っ摑んで喉笛をかっ切ってやる
              惑い乱れて 心騒いで 余りの切なさに胸締め付けられて
                私は尚も岩礁の上に立ち 大手を広げて 大陽を求める!
                  惨めだ
                    あゝ 畜生 惨めだ!
                      高らかに絶叫しよう―――惨めだ!!       



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