泣き濡れてしゃくり上げることも許されず



泣き濡れてしゃくり上げることも許されず
 疲れ果てて 独り
喉を嗄らして抗議の声を上げることも許されず
 黙り込んで 独り
煩悶に呻く姿を曝け出すことも許されず
 膝抱え 独り
出口の無い牢獄の中で 背中の翼は手折られて
 目眩の起きる悪循環の中で 罪人の如くに追い詰められて
  発した言葉は悉く書き換えられ
   向けた眼差しはべたべたと無遠慮に塗り潰され
    面倒臭さはやがて困難へと変わり
     鬱陶しさはその内怖ろしさへと転じ
      遣ること為すことを雁字搦めに縛られて
       自分の一部をひとつひとつ切り落とされて
        助けを求めることも 逃げ出して蹲ることも
         みっともなく泣き叫ぶことも 胸倉を掴んで悲鳴を上げることも
          無論のこと シニカルな姿勢や ユーモアの心意気を
           保ち続けることも出来ずに
            何の躊躇いも無く踏み付けにされた
             取るに足らないちっぽけな虫けらとして
              無力に 惨めに 足蹴にされて
               見捨てられて 見放されて 忘れ去られて
                声どころか名前すら持たず
                 そもそも知られることすら無く
                  只ひたすらに 無為に
                   朽ちて行く 朽ちて行く
                    腐って死んで行く………



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