もう たいようは とっくに しずんで



もう たいようは とっくに しずんで あたりは すっかり くらいというのに
ママは ぼくを おつかいに だしたんだ
ぼくは もちろん へっちゃらだったから おつかいに いったよ

その かえりみちの ことさ

みちの わきの くさむらのなかで
いっぴきのねこが しゅっと せをのばして じっとしたまま うごかないんだ

ぼくは ねこをみると ついつい ちょっかいを だしたくなるんだ
それで そのときも ぼくは そのねこにむかって こう いおうと おもったんだ

ちょっ、 ちょっ、 こっちへおいで。 くびのしたを なぜてあげるよ。

ところが ふっと きが つくと そのねこのようすが
あんまり りっぱなんで
ぼくは こうきな せいしんを りかいする
ひとりの きしとして
そのねこを そっとしとこうと おもったんだ

ところが あるきだそうと おもって あしを うごかしたとき
ぼくは うっかり あしもとの くさを がさっと けっちまったんだ
それで そのねこは びっくりして いっしゅん ぼくを みつめたかとおもうと
それはもう かぜのように すごいはやさで くらやみのなかへ かけていっちまったのさ

そのねこの じっとしているところは ほんとに りっぱだったんだ
なにか ぼくには きこえない おとを きいているみたいに
すごく きんちょうを ようする ような めいそうに ふけっているみたいに
なにか よるだけにやってくる もののけはいを かんじとっていたのかもしれないし
ひょっとしたら つきの まりょくで そらを とぼうとしていたのかもしれない!


それなのに ああ ぼくったら!



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