見よ、私は黄金であり、



見よ、
私は黄金であり、
太陽であり、
あらゆるものを薙ぎ倒さんとする嵐である。
覗き込まれた万華鏡である。

言葉を溶かし込んだ混沌のシチューの中から私は生まれたが、
今や私には目がある。
そして世界を焼き尽くすだけの炎が。

名前を失くしたものとして
この世に生まれ出て来たからには
私のすべきことは何よりもひとつ———
己が身に相応しい名前を見付け出し、
それを我がものとすることこそ我が本分。

広漠たるこの荒れ野は舞台、
私が演じ、演出し、跪く為の
—— しかし私が作り、経営するのではない——。
しかも実はここも小さい。

舞台の上で何が起ころうと、
それは丈高い草原の中のほんのひとかけら、
約束された如何なる栄光も、
真の闇を照らすのに非ざれば全て空しい。

闘争し、
敗北し、
その足掻きがひとつの流れを作る。
だがその軌跡を全て辿ってみたところで、
その奥底で光り輝く
未知なる憤怒——そして恐怖を見ること無くしては
何の意味も無い………意味は無いのだ!

迷える幼な子の様に途方に暮れつつ、
それでも私は発火を()めない。
理由など知らないし、
これからも知ることは無いであろう。
その疑問が消えた時、
私は路傍の砂利と成るか、
あらゆる美しい死を映し込む水晶と成るであろう。

見よ、
私は大気であり、
瀑布であり、
万物を呑み込まんとする溶鉱炉である。
悍ましくも芽を吹いた
一時 (いっとき )の微笑みである。



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