『聖なる脅威』より
第2章第7節
(Chapter2, 7)



 ルドルフは前の世代が保持して来たものを徹底して破壊する者として描かれてはいるが、年長の世代にも彼を理解してやれる者がいない訳でもない。それがここに登場するカーストール医師であり、出番こそ少ないものの、ルドルフの誕生と死の両方に立ち会っており、物語上歴史の重要な証人としての役割を与えられている。彼の息子のディックの方はそれ程活躍する場面がある訳ではないが、ここに紹介した場面ではルドの側に立つものの一人として旧世代との対話を成立させ、新しい世代の到来を告げている。

 全編ルドの行跡を追った本作中にあって、彼が全く出て来ないこの場面は単なる間奏曲として挿話的に扱われてはいるが、後年カーストール医師はこの時の会話が実に予言的であったことを、複雑な感慨と共に悟るのである。


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