『人間和音』より
第一章第1節



 空想の中で人や物を思い描くと云う行為は、例えば『妖精郷の囚われ人』の冒頭でも描かれているが、想像の産物がやがて独自の理やそれ自体の完全性を持った世界へと主人公を誘い込むのは、幻想小説のお決まりのパターンである。この箇所では夢見がちな主人公の前半生が簡潔に描かれており、次の節から始まる壮大な実験=秘儀参入物語の前奏曲を成している。 これ以降、物語は完全に人里離れた牧師の家の中で起こることになる。



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