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06/10/09(月) 『奇跡の職人芸 素晴らしき特撮世界』その6
『世界大戦争』 『大巨獣ガッパ』 『妖怪百物語』 06/10/07(土) 『奇跡の職人芸 素晴らしき特撮世界』その5 『吸血鬼ゴケミドロ』 『宇宙人東京に現わる』 『地球防衛軍』 |
『奇跡の職人芸 素晴らしき特撮世界』その6 このシリーズも今回で最後です。 平凡な一市民一家の日常を通して、迫り来る第三次世界大戦の恐怖を描いた傑作です。公開されたのがキューバ危機の前年ですから当時はフィクションでは済ませられない話だったでしょう。基本的に娘の結婚話が進む中で、時々日本の閣僚会議や東西それぞれのミサイル基地や各地での衝突の様子が挿まれると云う形で話が進んで行くのですが、あちこちの断片的な緊張の高まりが漠然と積み重ねられていて、具体的に何がどうなって最終的にミサイル発射へと至るのか、と云う過程の描写には説得力に欠けるところがあります。遠い何処かで幾つもの出来事が起こって行く内、何時の間にか訳も分からずに気付いてみた時には皆殺しにされてしまう、と云うのは恐らく庶民の感覚では正しいのでしょうが、その点が却ってネックになっている面も否めません。 この映画には名優達が目白押しです。先ず、主役のフランキー堺。戦後の東京で裸一貫から一家の大黒柱として働いて来た、外人記者(ジェリー伊藤。マジメな顔をして国際情勢を懸念したりします)のお抱え運転手。老け役なのですが、私は当初それと分からずに、病気の恋女房(乙羽信子)のことを母親かと思ってしまいました。国際間の危機が高まっても、「こちとら何ンにも悪いことしてねェんだぞ」「みんな燃やしちまったら、一体誰が得するってンでェ」「その内何とかなるンじゃないスか」などと株の儲けばかり気にしている強かな江戸ッ子なのですが、荒っぽい中にも家族に対する深い愛情が滲み出るいい芝居をしています。女房を手伝って狭い庭の小さな花壇にチューリップを植えるシーンや、誰もが疎開して空っぽになった東京で、強引に普段通りの日常を続けようとしつつも、「原爆でも水爆でも落としてみやがれってンだ畜生ッ! オレ達の幸せに指一本出させやしねえぞ! オレ達ゃあ生きてるンだ!」と二階で独りで男泣きするシーンなどは泣かせます。 その娘(星由里子)は二階に下宿する船員(宝田明)と恋仲。この映画はとにかく「幸せな小市民の生活が国家同士の対立によっていきなり破壊される」と云う主題を扱っているので、小市民達は過剰なまでにニコニコ笑って生活しているのですが、この2人はもう見ているこっちが恥ずかしくなる位イチャイチャです。お父さんにどうやって話を切り出そうかとシミュレーションしてみたり、将来の家族計画について話し合ったり、いざ破滅を目の前にしても「コウフクダッタネ」などと無線を打っているものですから見ている方は堪ったモンじゃありません。 宝田の乗っている船の船長は東野英次郎で、給仕長(?)が笠智衆なのですが、後者は胃潰瘍で療養中に幼稚園の手伝いをして「子供達から教わることばかりです」「この年になって何もかもが新鮮で!」と朗らかに笑ったりするのが何とも痛々しい限りです。ラストで、東京壊滅を目の当たりにし、自分達も放射線に冒されることが分かってい乍ら、東京へ戻る決意を固めた船長達に「おいしいコーヒーを持って来ました」と配る行や、その後の宝田との会話は胸を打ちます。「どんなことがあっても、あーこりゃ美味い! と思う、それこそが………何と言うのかな、上手く言えないが………」「生きる権利」「そう、生きる権利! 人間は生きる権利がある」。そして最後の呟き。「人間は、素晴らしいものだがなぁ………一人も、いなくなるんですねえ………地球上から………」(世界戦争でいきなり人類完全絶滅と云うのも極端な気がしますが。以前紹介した『第三次世界大戦』でも、殺されたのは「たったの」20億人で、アルゼンチン政府が生き残った人々に世界の再建を呼び掛けていました)。笠智衆が瞳を潤ませる珍しいシーンが見られるので、彼のファンは要チェックです。 他に、この非常時に病気で倒れてしまう総理に山村聡(こちらも老け役)、外務大臣に上原謙、防衛大臣に河津清三郎(この人にはこの役はやって欲しくなかった! 何か田崎潤によく似ていて恐いんだもの)、官房長官に中村伸朗が出て来ますが、「誰も戦争なんかしたくないんだからな、出来るだけの手を尽くそう」などとキレイゴトを並べているだけの辺りが、この映画の限界と言えば限界を表しています。 特撮は円谷英二ですが、これは当時の特撮技術の水準からすれば最高レベル。何しろ巨大怪獣等の実在しないものが出て来ず、リアルに徹しているので迫力があります。構図等も入念に計算し尽くされていて、ぱっと見ると本当に実物と間違えてしまいそうなカットも多々あります。『ハワイ・マレー沖海戦』でその余りのリアルさに検閲に引っ掛かった、と云うエピソードも、本作を見れば十分納得がゆきます。具体的には、国籍不明の潜水艦と大演習中の潜水艦隊との追跡戦、38度線での戦闘機や戦車、核も使用した激しい攻防戦、故障によって誤ってカウントダウンを始めてしまう連合国ミサイル基地、雪崩によってカウントダウンを始めてしまう同盟国ミサイル基地、等々が描かれているのですが、ラストと東京壊滅のシーンは特に力が入っています。先ず、地平線上からオレンジ色の光が昇って来て、いきなり大爆発! 国会議事堂や東京タワー等、お馴染みの名所が次々に吹き飛ぶ! 次に衝撃波が遠くの家々までも吹き飛ばし、津波を起こし、富士山の彼方に巨大な光のドームが浮かび上がる! それから燃え盛る炎、炎、炎! 紅蓮に包まれる大都市東京! そして富士山の彼方に毒々しい真ッ赤なキノコ雲が………! この後も、自由の女神やら凱旋門やらクレムリン宮殿やらが、前後見境無しに次々吹っ飛ぶ様は実に圧巻。これぞ、特撮映画、と云った感がありました。 松竹の『宇宙怪獣ギララ』と並んで、普段怪獣とは全く縁の無い日活が唯一製作したことで有名な怪獣映画です。「ガッパ〜〜〜ぁぁあ! ガッパ〜〜〜ぁぁあ!」と云う何とも気の抜ける主題歌で幕を開けます。「プレイメイト」社の新企画、大レジャーランド計画用の動物の捕獲と学術調査を兼ねた一行の船(どう見ても動物を積めるスペースなんか無いのですが)が、南海の孤島、「オベリスク島」に乗り込みます。そこで見付けた伝説の巨獣「ガッパ」の卵から孵ったばかりの子供(人間大。後に10数メートル位に生長)を捕獲して日本に連れ帰った為に、親ガッパ2頭が地底湖から出て来て島を全滅させ、日本まで飛んで来て熱海を全滅させ、子ガッパと共に朝焼けの空に消えて行く………と云うありがちなストーリー。イギリスの『怪獣ゴルゴ』が多分これの元ネタではないかと言われているとかいないとか。 この映画はどうにもチャチさが目立ちました。例えばオベリスク島。火山はミニチュアでしか有り得ない速度で噴煙を上げるし、ヤシの林が次のカットでは松林になっていたり、どう見ても黒く塗った日本人にしか見えないカタコトの日本語を喋る島民達は、腰ミノに鎗を持って腰振りダンスと、如何にもそこらのナイトショーにでも出て来そうな「土人」ばかり。村の中心には派手なトーテムポールもあったりしてもう何処だか判りません。唯一の例外が「イースター島のにそっくり」な巨大な像で、地震であっさり崩れてしまうのですが、これは多分実物大の模型を作ったのでしょう。どうも力の入れ所を勘違いしているとしか思えません。 期待はしていなかったのですが、肝心のガッパがどうにも冴えない代物でした。全身緑のウロコに覆われ、オスの頭にはでっかいトサカ、退化した翼、クチバシにはギザギザの歯、と、デザイン自体はそれ程悪いものでもないのですが(多分始祖鳥をモデルにしたのでは?)、着ぐるみのバランスがどうにも悪く、中に人間が入っていると意識せざるを得ない形態に仕上がっています。子ガッパはまぁ可愛気が無いし、飛ぶシーンも、退化している筈の翼(水中で生活している動物に何故翼があるのか不明ですが)をバサッと広げるといきなり宙に浮き上がって、後は飛行機の様に一直線、と云う味気無いもの。熱線で次々と飛行機を百発百中で撃ち落とすシーンが唯一爽快でした。 江戸の地上げ騒動に、「百物語」による祟りを絡めた幻想的な佳品です。監督が安田公義、特技監督が黒田義之と云う手堅い布陣。悪党側の面子が、豪商但馬屋が神田隆、その手下の親分さんが吉田義夫、寺社奉行が五味龍太郎と、これ以上は望めない位のキャスティング。彼等が組んで或る長家とどの神を祀っているとも知れぬ小さな社を取り壊し、岡場所を建てようとするのですが、但馬屋は或る晩お偉いさんを集めた宴席に噺家を呼んで、百物を一席ぶたせます。百物語と云うのは怪談ひとつが終わる度に蝋燭の灯を一本ずつ消して行って、最後の一本を消してしまうと、憑き物落としのおまじないをするんだそうですが、但馬屋はこれを迷信と馬鹿にして抗議する師匠を下がらせ、その代わりに「私なりのおまじない」と称して出席者全員に小判の山を持たせます。そんな訳で、提灯お化けやのっぺらぼう、大首や火吹き婆等の妖怪が束になって、この悪党連中に祟る訳なのですが、よくあるタイプの時代劇を基調とし乍らも、結果的には『大魔神』や『必殺仕置人』等の様なダークな勧善懲悪ものになっています。一応長家に住む謎の浪人(藤巻潤)が、普段はセンベイ布団なんかを引っ被って昼寝しているクセに、イザとなると群がる悪党共をバッタバッタと薙ぎ倒し、小判をくすねたり、攫われた大家の娘(高田美和)を奪い返したりと凡そリアリティーの欠片も無い大活躍をするのですが、それはそれ、これはこれ。最後に天罰を下すのは妖怪達です。 この妖怪達はとにかく手作り感覚が楽しいの何の。例えば、噺家の話の中においてけ掘とろくろ首が出て来るのですが、障子に映る女の影の首がスルスルッと伸びて、その先の障子の陰から女の顔がニヤリ!………と、こんな見え見えのトリックが上手く決まってくれた時の快感は、CG合成等で同じものを見せられた時の比であはりません(解って貰えるでしょうかこの感覚)。狂言回しで出て来る但馬屋の知恵遅れの息子(ルーキー新一)が壁に描いた落書きの唐傘お化けがアニメで動き出して踊りまくった挙げ句、一度フレームアウトして実物(糸で動かす人形)として登場する、なんてのもあります。ラストの(明らかに水木しげるからデザインを借用したと思しき)着ぐるみの大群の百鬼夜行が高速度撮影と二重映しで朝闇の中へと消えて行くシーンは、ソ連の『ヴィー』(邦題『妖婆 死棺の呪い』)に次ぐ圧巻。観て損はありません。 |
『奇跡の職人芸 素晴らしき特撮世界』その5 今回でもう5回目。館内BGMが新しいものに変わっていました。今回上映された『地球防衛軍』等の伊福部サウンドが、以前より少し時代が下がった為か多少クリアな音になって響き渡っていました。始まる前からイイ感じです。 血の様に真ッ赤な空の海を行くジェット旅客機。時々窓に鳥がぶつかって来て(紫の塗料にしか見えない)血を撒き散らす異常な日。そこへ、機内に時限爆弾が持ち込まれたとの連絡が入り、機は羽田に引き返すことに。ところが機内検査で見付かったのは、東南アジアの和平の為に尽力していた某外国人大使を射殺した暗殺犯。機はハイジャックされ沖縄へ向かうことに。と、そこへ、偶然スイッチの入ったラジオから、謎の飛行物体が現れたと云うニュースが。いきなり現れたその飛行物体と思しき光源とジェット機はニアミスを起こし、機は墜落して何処とも知れぬ岩ばかりの無人境へ。生き残った人々のエゴ剥き出しの醜い生存競争が始って………と云う、何とも世紀末的なオープニングで始る怪作。劇画にしたら似合いそうなタッチです。台詞回しがどうにも固く、特撮もまぁチャチなのですが、強烈な怪奇的ムードが全編に漂っているので、奇怪な酩酊感に一度上手く乗ってしまえば、多少の欠点は十分に補って余りあります。 しかしそれでもやはりこの映画はとにかくツッコミ所が満載です。射殺犯のケースに何故か意味も無く強酸が入っていたり、副パイロットはエンジンがガンガン火を噴いた後だと云うのに、「全員危険ですから外に出ないで下さい!」などと叫んだり(普通はとっとと機外に避難するでしょう。爆発しても知らないぞ)、外の様子を全く見に行こうとしなかったり(普通状況を確かめようとするでしょう! 実は歩ける距離に街があったことが最後になって判明するのですうが、近所にジェット機が落ちたのに住民達が誰一人全然気付かないのもスゴい)、死人が何人も出ている(筈の)事故に巻き込まれ乍ら、生存者達はカスリ傷程度しか負っていなかったり、喉の渇きは訴えても誰も空腹だと騒がなかったり、と、色々と苦笑させられるシーンが多いです。 肝心の「吸血鬼」も結構マヌケです。オレンジ色のアダムスキー型円盤に乗って来た他の惑星の生物「ゴケミドロ」(「後家みどろ」とか書くと何やら淫猥な響きがしますな。どうでもいいですが。何やらそれっぽい謂れがあるそうなんですが本当にどうでもいいですな)が、暗殺犯の体内に入り込んで(鼻梁がパックリ割れてそこから水銀か何かが逆回しで入り込みます。その気になって見れば初回はそれなりにショッキング)吸血鬼と化し、次々と人を人々を襲うのですが、襲われた人々は別に新たに吸血鬼になったりする訳ではなくあっさり死ぬだけなので、こりゃ全員殺すのにさぞ時間が掛かるのではないかと余計な心配をしてしまいます。少なくとも侵略としては極めて非効率的な方法だとは思うのですが、こんなのでも何故か成功してしまう様なんですな、これが。ラストで地球滅亡の危機が描かれるのですが、あんな短時間(多分数日程度)でどうやって地球人全員の血を吸ったのでしょう。誰も頼んではいないのに、人間の口を借りて「我々は或る惑星に住む生物ゴケミドロ。我々の目的は人類皆殺しだ」などとわざわざ教えてくれる辺り、仰々しい演出に乗らないとかなりアホらしいです。普通、吸血鬼とエロチシズムは切っても切れない関係にあるものなのですが、襲う相手が主にアブラギッシュな中年親父や年増女だったりするので見ている方は萎えまくり。唯一の例外が、ベトナムで戦死した夫の遺体を横須賀に引き取りに行くアメリカ人女性なのですが、どう見ても、血を吸っていると云うより、スケベ親父が首筋にねちっこく口付けしている様にしか見えませんでした。 俳優陣は外れも多いのですが当たりも何人か。吸血鬼と化す暗殺犯を演じる高英男は、本業はシャンソン歌手なんだろうせうが、眠そうな半眼が如何にも何かイヤらしそうな感じ。サングラスとピストルと云うお決まりの安っぽい登場をする割には、鼻梁がパックリ割れた無表情な顔で仲々の怪演を見せてくれます。他にも、極限状態を面白がるとても主治医にはしたくない精神科医(加藤和夫)や、一見冷静沈着そうに見え乍らも、絶好の好機とばかりに人体実験をしたがる宇宙生物学者(高橋昌也。よくまぁそんな人が偶然乗り合わせていたものです)、「世の中が面白くないからだよ!」などと云う理由で爆弾を持ち歩く若者(山本紀彦)等、ヒトクセもフタクセもある怪登場人物達がもうねちっこくて大変なのですが、特筆すべきはチョビヒゲと眼鏡の次期総理候補「県民党」代議士(北村英三)と、自分の妻を彼に差し出して便宜を図って貰っている軍需産業のお偉いさん(金子信雄)。この二人はとにかく自分勝手。その余りの我が儘な傍若無人振りにはもう呆れるを通り越して感心する程。両役者の暑苦しい演技と相俟って、圧倒的な存在感を放っています。ゴケミドロ抜きで、これら「絶対一緒に遭難したくないタイプの人達」の描写だけでも、この映画は傑作の部類に入れられるでしょう。シーンの大半がジェット機の中かその近場で展開されるので、閉塞状況下で次々に犠牲者が増えて行くタイプの密室劇としては『マタンゴ』に次ぐと言っても褒め過ぎにはならないでしょう。 謎の飛行物体が地球に飛来するが、それは実は地球の危機を警告しに遣って来た宇宙人「パイラ人」のもので、やがて新天体「R」の接近によって天変地異が始まり………と云う感じのお話。細部はバカバカしいので省きますが、天文学者の親父が居酒屋「宇宙軒」に行くところから始まり、学者達が互いに従兄弟同士だったり、その子供達が恋人同士だったり、天文台に近所の幼稚園の子供達が大挙して避難して来たり、と、全編妙に卑近な生活臭の漂う庶民派ドラマでした。宇宙で起こることは全て望遠鏡を通して描かれるので迫力は無し。唯一スペクタクルな筈の大洪水のシーンも、白黒の災害映像を流用したりしているので些か興醒めでした。 物理学者が何やら水爆以上の爆弾を作れる方程式を発見したらしいのですが、人間の人気歌手に化けたパイラ人は最初「こんな恐ろしい研究は私達はもうとっくに中止してしまいました!」とか何とか批難してさっさと何処かに消えておき乍ら、スッタモンダの挙げ句地球上の原爆や水爆を打ち込んでも「R」には効果が無いことが判ると突然再登場して、空気の全く読めない武器商人(協力を仰がなければならない筈の博士を「方程式を教えろ」と脅すだけで何とか上手いことやれるんじゃなかろうかと考えるド素人な上に、拒否されたと見るや博士を椅子に縛り付けてその儘放ったらかしで何処かに消えてしまいます。何を考えているやら)に拉致されていた博士を救い出し、あっさり新型爆弾を完成させて「R」を破壊してしまいます。テーマ性があるんだかないんだかよく分かりません。 一番の見所は、岡本太郎デザインによるパイラ人(の筈)で、でっかい黒いヒトデの真ん中に巨大な目がひとつ、と云うその姿は確かに奇抜でインパクトがあるのですが、実際には人がヒトデ型のシートをすっぽり被っている様にしか見えない、と云う空回り振りが悲しいところです(足の部分なんかはしっかり潰れてしまっています。理想と現実、と云うやつでしょうか)。宣伝用のスチール写真では、大洪水の街に巨大なパイラ人が仁王立ち! みたいなカットもあった様ですが、そんなシーンは全く無し。全員人間大で、宴会場脇の暗がりからヌッと現れたり、釣りをしている人達の前に川の中からヌッと現れたりして驚かせた挙げ句、足跡代わりの青い火を残して消えてしまったり、どう見ても30センチ位しかない円盤の中で、「地球人と我々とでは美的センスが違うから、地球人に化けよう。だが誰がそんな辛い役目を引き受けるのか」などと議論したりする位です。地球人の人気歌手に化けてしまった後は全く出番無し。悲しいものです。因みにこの代表者、人類に警告をしに来た割には、主人公達の遊びに来た湖にプカプカ浮いていたり、記憶喪失を装ったり、テニスで大ジャンプをしてみせたりと、結構迂遠なアプローチを仕掛けます。やる気があるのでしょうか。 大昔土星と木星との間に存在したと云う謎の惑星「ミステロイド」。愚かな戦争によって故郷を破壊してしまい、今は宇宙の放浪者となっているその住人「ミステリアン」達が、秘かに日本山中に地下要塞を建造していたところから、全地球軍との大攻防戦が始まります。謎の山火事に謎の地盤沈下による一村全滅、そして謎のロボット怪獣の出現、これらの怪現象の調査に訪れた科学者5人が要塞へと招待され、赤青黄の派手なヘルメット(目の部分が空いているので宇宙服ではないでしょう)を被ったミステリアン達から、「無用な争いは避けよう。我々は平和主義者だ。我々が要求するのは高々半径3kmの土地と、地球人との結婚の自由だ。これが結婚相手の候補者リストだ。既に何人かは招待してある(前者については理由の説明は一切無し。後者については、ミステリアン達の子供の80%が異常児の為、遺伝子に活力を吹き込む必要があるからだそうです。但し攫われるのは全員女性ばかり)」と言われるのですが、地球側ではこれに「既に侵略・拉致をしているのに何だ。戦うしかない」「今は3kmだが、この後どうなるものだか分かったものじゃない」と即刻戦闘を決意、これに応じるかの様にミステリアンの方でも「今度は120km」などと言い出すものですから、争いはエスカレート。碌な交渉もせずにいきなり実力行使とは、流石、冷戦時代の作品だけあってどっちもどっち、無茶苦茶に好戦的です。 俳優陣は、科学者代表が志村喬、軍人代表が藤田進、主人公の若手科学者がヤンキー頭の佐原健二、と鉄壁の布陣なのですが、人間ドラマの核となるのが、ミステロイド説を提唱した若き天文学者の平田昭彦(この元婚約者が河内桃子!)。白シャツが似合います。療養先の村の全滅に巻き込まれて一度死亡したと思われるのですが、何とミステリアンの協力者となってテレビの画面に現れます。ミステリアンの侵略意図を見抜けず「これで東日本は我々のものだ」とリーダーが言うのを聞いて初めて気が付くと云う、肝心なところでとんだおマヌケ振りを発揮しますが、最後は「僕は騙されていたんだ」と美女達を救出して要塞を内部から破壊して果てます。『ゴジラ』でもそうでしたが不運な役回りの似合う人です。 この映画の一番の見所はやはり勇壮な伊福部サウンドと共に展開される派手な戦闘シーンでしょうか。「地球軍」の方は、初戦でボロ負けしてしまったので超兵器の開発に乗り出すのですが、これが以前から作っていたものがあったり、アッと云う間に完成したりして、次々新兵器が繰り出されます。スマートだけれどそれ程印象には残らないジェット機、どう見ても飛びそうにない串団子型のロケット、ジェットで山間に軟着陸し、自走も出来るパラボラ型の熱線砲等、メカ好きの男の子には堪らないでしょう。 対するミステリアンの方の兵器は、各種熱線を出すドーム型の地下要塞(浮上沈下型)、何故か大体3機しか出て来ない、小さくて形すらよく判らない戦闘機、それにロボット怪獣「モゲラ」(劇中では名前無し)です。要塞は外観もすっきりしていて美しいのですが、内部もスマートで目を惹きます。様々な機械が置かれた各部屋の様子は流石に古めかしいですが、大エレベーターややたらと広い通路等は、余計な装飾が無くてボロを出し難い分、今見ても左程遜色はありません。全身これキャタピラとドリルと云う掘削怪獣モゲラは、デザイン的には数多あるロボット怪獣達の中でも屈指の出来映え。そのずんぐりした安定感のあるボディや頭頂部で回転するアンテナが何とも言えません(因みに私は、モゲラの頭部は菱形のサーチライトとドリルの鼻だけかとずっと思っていたのですが、よくよく見てみると透明な口らしきものが確認出来ました)。これで下半身の動きがもっと着ぐるみ丸出しではなく重機めいていてくれたら最高でした。出番が少なかったのが残念です。一応2台あるらしいのですが、1台目は、ミステリアン達が自分達の威力を誇示する為に山の中で大暴れさせます。自衛隊と激しい戦闘を繰り広げ、見所のひとつ、山間住民の避難シーンを盛り上げてくれるのですが、ミサイルにやられて割と呆気無く退場してしまいます。2台目は本当に数秒だけしか出て来ず、パラボラ型の熱線砲の足下を地下から掘り崩して倒すのですが、哀れその下敷きになってしまいます。アホですな。 |