1711.
 行動に於て、絶望とは即ち怠惰の別名である。


1712.
 旅行の目的とは、存在を享受することだ。最終的に重要なのは地理的に何処へ行くかではなく、実存的に何処へ行くかが問題なのだ。


1713.
 面白くない人生なんぞを送って、一体何が面白いのか。


1714.
 他者を差別し、見下して貶める快楽を得る為とあらば、人はどんな怪ッ体な理由でも思い付くものだ。自分の存在を肯定する為には反照板としての他者が必要不可欠であると感じる様な人種であれば、自らを正当化してくれる道義的憤激の鎧を纏っていることを演出する為に、どんなに恥知らずなことでもやってのける。彼等にとって偽善は最早偽善ではない、それは己が存在に課せられた正統の権利の行使であり、彼等に与えられた狭量な全世界に対する至高の義務の遂行なのである。


1715.
 幸福になるだけなら豚にも出来る。


1716.
 人間であるとは、実践によって証明されるべき何物かであって、所与の事実ではない。


1717.
 自分に理解出来ないものに直面した際、それを理解しようと努める姿勢と、頭から拒絶し見ないようにする姿勢とは、時として非常に良く似て来ることも有るのだが、やはり時としては天と地程の差が出て来ることも有る。否認と反発は、その人物が置かれている情況を鑑みれば致し方が無い、と判断する場合は勿論許されて然るべきだとは思う。だがそれこそが唯一採り得る選択肢であると判断することは、人間の潜在性に対する冒瀆であって、私にはそんなものを正当の主張であると認めることは断じて出来ない。
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