1674.
自分の中に屈辱の感情がまだ残っていることに安心する。私にもまだ自尊心が残っていることを確認出来るからだ。
1675.
私はまだ生きているし、生きているんだと言ってみたいし、今日と云う日に参加してみたい。だが忘れられ、視界の外へ追い遣られたこの身にとって、吹けば飛ぶ様な意志が何になろう。
1676.
カタストロフィによるカタルシスを得ようとするのは、虐げられし人々―――そこから抜け出す望みが少ない、固定化された弱者層―――の常道であって、その内実は戦争、災害、疫病等、彼等自身を例外としてくれることが無いまでも、せめて強者と弱者とを差別せず、皆等し並みに訪れる不幸によって充足される。
1677.
愛も憎悪も、同じものであろうとする為には常に更新し続けなければならない。移ろい行く世界の理の裡に搦め取られている限り、自らも変化し続けるしか無いのだ。
1678.
生自体への復讐の為に生を送る人達が居る。
1679.
主観と客観とが出会う場目に於て時として起こる奇妙な自家撞着的現象―――運命への愛。
1680.
悍ましい夢を見て目が覚める。現実の余りの空疎さに驚く。そしてまた悪夢の種を育てる。その繰り返し。