1606.
 内在的な恐怖によって狂気を抱え込んでしまうことには耐えられる。だが外圧的な恐怖によって狂気へと追い立てられることには到底耐えられない。所詮私は自分の身を守ることが下手な一人の小心者に過ぎないのであり、外界から私の為に用意してくれた様々の拷問道具をいちいち試してみたりする程には好奇心旺盛ではないのだ。このことは恥辱だろうか? 無論そうだ。だが、敢えて目を逸らそうと常々努力しているので、余程のことが起こらない限り問題とは成らない。


1607.
 私の故郷は未来に在る。過去には無い。


1608.
 この一瞬一瞬に失われて行くものの多さと大きさに耐え切れない。知れる限りの全てのことを把握していたいと云う傲慢さを抑えられない。こう云う時には抽象性とは正に心をパンクから守る為のフィルターであり、現実の重さが直に圧し掛かって来ない様にする為の防護服である。


1609.
 「色々有るけど、この世は無害。」───あらゆる喜劇作者の述懐。


1610.
 この世が悲惨であると云うことは、既定の事実であって、この前提を共有しない者とは、大概何を話そうとも無駄である。だがこのことは飽く迄地上的な人間の気分に立った時の話であって、より公平で冷静な観点からすれば、この宇宙は悲惨ですらない。


1611.
 There are still so many questions I must ask, then there is life. I must survive with this queer world.
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