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1375.
それ (、、 )を喜劇にしようと努力する。だがそれ (、、 )ははみ出し、威嚇し、私を脅かす。思いあぐねていっそ悲劇にしようと思う。だがそれ (、、 )は格調の高さどころか破局の徹底さえも、意味の有る筋書きすら持ち合わせていないと来ている!


1376.
凡庸でなくては生きて行けない。だが、凡庸なだけでは生きている意味が無い。


1377.
私の気分は総じて傲岸不遜、独善的で排他的なものが多い。それぞれの気分が他を圧して自らが第一のものであろうとし、複数の気分が存在することを許さず、何の躊躇いも無い没反省的な優位性を主張して止まない。それぞれの気分に対して誠実であろうとする私のバカさ加減がそれに輪を掛け、甚だしい齟齬や矛盾や対立を惹き起こすのだが、結局のところ最終的な勝利者と一時は見えるものもやがてまた他のものに取って代わられ、斯くして群雄割拠の野放図な混戦が繰り広げられることになる。しかもそれぞれの勢力図だけではなく、個々の気分そのものの内的な本質もやがては変化するので何とも奇怪で無様な喰らい合いが現出することになる。私が生きている限り延々とその併呑戦争は続き、どれかがその余りのバカバカしさ無意味さに気が付くことがあっても、決して止まることが無い。


1378.
カサカサに乾いた倦怠の風景の中で、私は一人朽ち果てて行く。一方で、自分が今だ何ものでもないことに対して非常に憤りを覚えているのに対して、他方で今酷く安堵しているこの気持ちは、世界の無限の多様性に対して謙虚さを得ようとする理想追求型の努力から来ているものではなく、寧ろ単なる怠惰と諦めに起因している。自分が自分自身に対して言表可能でないと云う事実の齎す責任の回避の気安さが、際限の無い甘やかしを自らに対して許すことになる。疲れ果て、跳力を失ってヨロヨロと蹌踉き乍ら、 私はもういっそこの通り何もかもが未決で未裁断の儘永劫の暗澹たる濁流に呑み込まれて行ってくれはしないかと覇気も無く思い続けている。


1379.
人の話し声、人の動き回る音、人の食べたり眠ったり呼吸したりする音、人の気配が、私を地上に縛り付ける。他人の臨在は牢獄と同じだ。私はペンも舌も目も耳も取り上げられ、唯ひたすらに耐えていることしか許されぬ儘、無為な存続を余儀無くさせられる。私は萎縮し、口籠り、考えは千々に乱れ、起き乍らに魘され、絶えず付き纏う頭痛の様に私を悩ませる圧迫感にほとほと嫌気が差し乍らも、この炎天下で茹だる様な忌わしい地獄からその裡抜け出せる時が来るのを、凝っと待っていることしか出来ない。


1380.
凡そ勝ち負けによって量られる事柄などと云うものは、基本的にどうでも良いことばかりである。但、ものに依っては敗者の側が多大な災難や迷惑を被る場合があるが、それによって勝者の側の栄誉が些かでも増進されると云う訳ではないし、有ったとしてもそれはバベルの栄誉である。
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