1184.
悩むだけならば誰にでも出来る。問題は、如何にしてそれを育て上げるかと云うことだ。大抵の者はここでちっぽけな鉢植えを選んでしまう為、後々無残な結果になる。


1185.
安手の赦しではちっとも赦された気になれない。だから私としては、鬱蒼たる広大な森の更に奥深くへと入って行ってみるしかないではないか?


1186.
この得体の知れない感覚を取り敢えず「不安」と名付けておこう。さてその効能は?


1187.
去勢されて人当たりのいいロボットの様に振舞うことを義務付けられている。外見だけでも鎖に繋がれることを喜ぶよう強要されている。


1188.
消費者:法に触れない程度での専制が認められている暴君。直接間接を問わず、金を支払うことが関わる場面になら何処にでも出没する。


1189.
意図的な思い込みを欠いては、何を語ることも出来はしない。懐疑を選択し制限を設けること。


1190.
私を焼き尽くしてくれる言葉が欲しい。だが何度焼いても焼いても燃え滓が残る。


1191.
トイレ:1)人生が如何に不条理で惨めなものかを思い起こすべく黙想する為の個室。
 2)造物主があらゆる動物に与えた屈辱を慰める為の、或いはそれを再確認する為の礼拝堂。


1192.
想像力即ち知性ではないが、知性は須く想像力である。両者の違いは、如何に自分に理解可能な、或いは自分が見たいと望んでいる卑近な事柄から離脱出来るか、と云う客観視の度合いにある。己を、世界を、現在を相対化する為の道具と足掛かりを揃えることが、より正気の人間に成る為には絶対に必要である。


1193.
この死体の様な無為に、他の人間がどうやって耐えているのか私には見当も付かないが、恐らくその方法を知ったとしても私には実行不可能であろうと云う予感はする。どうでもいい詰まらぬことにいちいち一喜一憂して大騒ぎすることの如何に困難かを思えば、愚鈍が正しく神の恩寵であったことが理解出来ようと云うものである。


1194.
がばがばに水増しされた生に安住していられる連中の気が知れない。この気違い病院の中でせめて独りに成ることが出来たらどんなに有難いことか。
inserted by FC2 system