1130.
別に不平を言う為に生まれて来た訳ではない。だがまともな人間ならばそうせずにはいられない。


1131.
恐らくは、重ね合わせられたひとつの風景に成る為に、私は書いている。


1132.
どんな事件や事故でも散文的たり得る。それ自体で悲劇や喜劇たり得る事象は存在しない。人間の関わる事柄には常に第一義的な意味の喪失が控えている。だからあれやらそれやらの具体がどれだけ起ころうと、さして気に病まなければならない理由は無い。


1133.
歩き続けるには盲目かさもなくば極度の近視でなくてはならない。舌を動かすには頭は眠っていなければならない。


1134.
存在と云うこの途方も無い蛮行に対して、何やら見下げ果てた弁解をぶつぶつと呟き続けている神———今の私に我慢と妥協が可能なのはこの程度までだ。


1135.
宇宙を私で満たすことも出来ないし、宇宙とひとつに成ることも出来ないと云う諦めを早々に手に入れてしまった。そして悟りを得ようとして不様にけっつまずいた挙げ句に、いじけた不平家と化してしまった。


1136.
失われて行く一瞬一瞬の余りの無駄さ加減に呆然としていると、その内に日が終わる。私も一生こんなものなのだろうか。


1137.
正直に「あんた達なんかには私は全然興味が無い。あんた達のお喋りや戯言なんかもどうだっていい。精々観察対象として興味を引かれることが時々ある位だ」と会う人毎に言ってやれたらどんなにかすっきりすることだろう。


1138.
全く無駄で下らないものにも、それなりに効能は有る。それ以外のものが何か意味あるものの様に見えて来ることがあるのだ。尤も、大して長続きしないのが欠点ではあるが。
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