0946.
私の精神と私の肉体とは、偶々腐れ縁でずっと席が一緒だっただけで、別に仲が良い訳でも何でもない。


0947.
と或る有名な著者による、タワゴトを羅列したとしか思えぬ本に付せられた、註釈と解説を読む。どうやら大真面目らしい。成る程、知名度が上がると云うことと、それにつれて読み方のコンテクストが作り上げられると云うことの利点。


0948.
結局、私の生き場所は何処にも無いのだろうか。未来も、過去も、あの星空さえも。


0949.
遠慮するな、「学生」とは、「学ぶことを生きる生き物」、つまり、観念を食し、思想を呼吸し、言葉や記号の中を泳ぎ回って成長する生き物と云う意味だ。君は生きているか。


0950.
さて私がくたばってしまえばどうなるか、今ここで不安と倦怠を忘れようと徒労を重ねているこの私と云う現象は消えてしまって、不恰好で正視するに耐えない肉の塊が、さも私でございと云った顔をして空いた席を独り占めにする。この不愉快極まり無い屈辱的な事実に思いを巡らせた時、私は思わず憤死しそうになった。だが直ぐに思い直した。危ない危ない、それこそ彼奴の思うツボではないか。だが一体他にどんな態度が有り得ると云うのか?


0951.
事故か病気でかは知らないが、とにかく下半身の無い通行人を見掛ける。その人の顔に浮かぶ、さも自分は ハッピーですと云った笑顔に、例によって偽善と狂信の臭いを嗅ぎ付ける。だがその奥から一瞬ちらりと覗いた本物の優越に、私は戸惑いを隠せない………。


0952.
「動物の入店はお断りします」———あれだけ沢山の二本足の獣共がぞろぞろと居並んでいるのに、店員も客も、誰も迷惑に思わないのだろうか。


0953.
一人身で寂しくないのかと訊かれる。馬鹿な、一人も居ればもう多過ぎる位だ。
inserted by FC2 system