0925.
自分の老後の人生について真剣に悩んでいるその若者を見て、私は気が触れていると思った。そのことに何かおかしいところでもあるだろうか?


0926.
十代にして既に肚の底まで俗物根性に染まり切った少年少女達の、生ける屍達の一群と擦れ違う。一瞬にしてその場はホラー映画の一場面と化し、私は背筋を斬り付けられた様な寒気と冷や汗とを必死になって耐え乍ら、何でも無い振りをし、極めて平静な様子を装って、その場を後にした。敵中に唯一人何の支援も無く取り残された気分。


0927.
何かこれと言う時の、あの途方も無い飛躍、あの気の遠くなる様な無法、裏切り、失墜、反逆………。


0928.
仮に、世界の偉人列伝に、彼等が生涯どの様な手段で食い扶持を稼いでいたか、と云うことだけずらずらと書いてあったと想像してみるがいい………。


0929.
活発な:気が触れて元気な。ものの道理が解らない為に「何かを為す」と云うことに取り憑かれた。


0930.
背広:1)狂人の中でも特に兇暴な者に着せる拘束衣。大抵は効果が無い。
 2)露出狂のマゾヒストが誇示する為に好んで着用する衣服。


0931.
記憶:「後悔」の婉曲表現。


0932.
凡そ不当な暴力程、人を憤激させ、奮い立たせ、生き生きとさせるものは無い。無理矢理頭から押さえ付けられ、謂れの無い侮辱や中傷を浴びせ掛けられ、何の理由も無しに、或いは単に口実でしかない様な理由によって、右の頬をはたかれ、左の頬をはたかれる。そうした状況に於てこそ、人は己が生の実在たることを確信し、自らの行動を選択し決定すると云う飛躍の挙に出ることが出来る様になるのである。然れば君はその相手に対する精一杯の感謝の念を込めて「有難う、今私は正義の何たるかを君のお陰で明瞭に認識している」と礼を言って思い切り殴り付けるか、或いは溢れんばかりの優越を湛えた眼差しで軽侮してやるが良い。
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