0859.
政治家:1)全く笑えない冗談を触れ回って良識ある人々の顰蹙を買った挙げ句、国民全てにそれを聞いて笑うよう強制する人。
 2)大脳のあるべき所に肝臓があり、且つそのことを気にしない人。
  →政治力:大脳のあるべき所に肝臓があり、且つそのことを気にしない能力。


0860.
哲学科に所属する中年のその教師は、(おそ )くして授かった自分の子供について、その写真を見せびらかし乍ら嬉々として我々に語ったものだ。成る程、これでは誰もが、彼を哲学者だ、などと勘違いする気遣いはあろう筈が無い。


0861.
私の様な突然変異が何故私の血筋の中にひょっこり現れてしまったのか、全然見当が付かない。家庭環境は理想的とは言えなかったが、それ程悪くもなかった筈だし、五度引き付けを起こした他は、脳に損傷を与える様な何か大きな病気に罹ったとか、事故に遭ったとかしたことも無い。憶えている限りでは幼稚園の年長組の頃には既に存在し、遅くとも小学二年の頃までには確信犯的なものと化していたこの奇怪な〈孤独〉が、何処で、何時、何が原因で発生したものやら、さっぱり心当たりが無い。


0862
話してみて何か益がある相手と云うのは私の敵だけだ。他は皆、真剣な思考にとって疎隔を生み出すものでしかない。


0863.
混雑した図書館で本の読める人間と云うものが存在することがどうも信じられない。他人が臨在している場所で、一体どうやって自己と向き合い、自己の深部へ降りて行くことが可能になると云うのだろう?


0864.
最も完璧な友人とは、死んだ友人である。家族や恋人等にしてもその通り。


0865.
「明るい笑顔」を目にする。「白痴の幸福」を思い浮かべずにはおれない。そこで涙の出そうな程の感慨に襲われ、自分が彼等に口を出す筋合いは無いのだと自分に言い聞かせる。そして独り背を向けとぼとぼとその場を去る。何時だってこんな調子だ。


0866.
徹底した幻滅は、この世でそれ以上望むべくも無い知恵へと至る道を開いてくれることがある。だが中途半端 な幻滅は、愚昧の上に別の愚昧(新たな愚妹ではない。当人達はそう思いたがるだろうが、その実はもっと古くまで遡るものだ)を積み重ねるだけの結果をしか齎さない。あらゆるものに思いを巡らせておくことだ。そうすれば、見苦しい過ちを犯す危険は少しは減少する。
inserted by FC2 system