0845.
人身売買のCMを堂々とテレビで流す様な時代になってしまったからには、政治家や企業人並の面の皮の厚さを持ち合わせてはいない教師達は、児童達や生徒達とどうやって目を合わせようと云うのだろうか?


0846.
この世の生まれ出なければならない様な一体どんな悪いことを、私は仕出かしたと云うのだろう?


0847.
ヘーゲルだとかフィヒテだとか(シェリングはまだ少しは救い様が残っているが)、或る種の「哲学者」達の著書を読んでいると、時々、一度受けたジョークをあらゆる舞台で繰り返そうとする三流芸人であるとか、生涯唯ひとつの当たり役を、人気が出なくなってしまってからもまだ続けようとする老役者を見ている様な、何かいたたまれない気持ちになる。


0848.
私と云う眼差しの帝国(の領土内)にあっては、何ものも只存在すると云うことが許されない。それら、又は彼等に掛けてやるべきどんな慰めの言葉を、私は持っていると云うのだろうか?


0849.
恐ろしいことに、気が付いたら全てを失ってしまっていた。更に恐ろしいことに、気が付いたら私はそうした中で声を立てて笑っていた。そして更に尚恐ろしいことに、私はそうした恐ろしさをちっとも恐ろしいと感じてはいなかった。


0850
世界が言葉を持っている時とそうでない時がある。言葉を持たない歓喜に満ちた瞬間よりも、私は言葉を持った陰鬱な瞬間の方を選ぶ。その救い難い愚かしさまで引っ括めて、それこそが人間らしい生き方と云うものではないだろうか?


0851.
炎天下や熱帯夜に一篇の詩も一筋の思想も生まれて来ないのには充分な理由がある。生活に於けるありとあらゆる形あるものが飽和し、溢れ出し、でろりと溶解して、どろどろになってしまったアイスクリームの様に口を付けることが出来ないのだ。それ故私は夏を憎む。ぐだぐだになった頭を朦朧とさせ乍ら、残った力を精一杯振り絞って、夏を、憎む。


0852.
何か喋る時には気を付けることだ。あらゆる言明は、堕落の兆候を仄めかさずにはおかない。尤も、仮令充分に気を付けていたとしても、それでその兆候がすっかり消え去ってしまうことなど有り得ないのだが。
inserted by FC2 system