0789.
またも詰らぬ俗事に煩わされて苛々する。この余りにも馬鹿馬鹿しい非効率性、合理性の欠如。………だがこうして詰らぬ些事に気を取られていちいち感情を動かしてゆくのが、普通の世人の感覚なのかも知れない。………あゝ糞ッ喰らえだナァ、そんなのは。


0790.
何故か肌寒い人気の無い風景の静寂の中に取り残される。急に何かを問われている様な気になる。弁明か贖罪か、或いは居直りが必要になる。そしてまたあのうんざりさせられる倦怠がしゃしゃり出て来る。


0791.
法治主義を貫く為には、悪法もまた法でなくてはならない。だが民主主義を貫く為には、そこから学ぶ為の機会は最大限確保しておかなくてはならない。


0792.
或る朝、全ての人間が真理に目覚めた。夕方には、人類と云う種はこの地球上から絶滅していた。


0793.
仮令どんなに高い評価を受けようとも、それが正当な評価でないのであれば、一切が空しい。但し、金が絡んで来る時には話は一寸ばかり違って来る。


0794
故地に帰る様な気持ちで頁を捲る。「即自的であり得た時代」と云う幻想が頭を掠める。そして———何と短い一瞬の和解であったことか!


0795.
凄まじいばかりの人の群れ、群れ、群れ。似た様な服装に似た様な顔付き、一様な俗っぽい凡庸さ。こいつら、どうして全員発狂もせずにのこのこ歩いていられるんだ?


0796.
歩く生き恥、呼吸する無能、喋る愚劣が何年も何年も白昼堂々と大きな顔をしてのさばっている。こんな社会に住んでいれば、民主主義の原則に信を置けなくなるのも無理は無い。民主主義が教育と一体でなければならない理由はそこにある。
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