0762.
酔っ払いに人権など無い。奴等は「人間であったもの」であって、断じて「人間」などと呼べる代物ではない。理性的な、せめて知性的な存在であることを自ら放棄した人間を、最早「人間」などと呼べる筈があろうか。連中は同情や憐憫には値するかも知れないが、友情には決して値しない。連中に必要なのは治療と矯正であって、対話ではない。


0763.
改めて言うまでもないことだとは思うのだが、人間には、どんなバカなことでも口にする権利がある。そしてこれに対する攻撃は必ず拳ではなく舌によって行われなければならない。私がそのバカなことや攻撃行動の内容に賛同しているか否かは全く問題ではない。この原則に違反しようとする者を、私は一様に批難する。それと同様にまた、チョムスキーがフランスから被った汚名の如き理不尽が、状況の力関係によって許され、或いは正当化されてしまう様なことがあっては断じてならない。


0764.
また自分が自らの愚昧に押し流され、勝手な思い込みと感情の勢いだけでものを言っていたことに気付く。猛省し、今後はもう二度と滅多なことでは口を開くまい、はっきりこれと云った確信犯的発言は、知性による充分な吟味が加えられたと再三再四納得がゆくまでは一言だって口にすまい思う。だがどうにもバランスが取れない。その不安定さ自体が私の未熟さの表れなのだと気付いてはいるが、どう仕様も無い。愚かであることはそれ自体私自身への裏切りであり、世界への背信行為である。その痛みを適切に受け止める術と云うものを知っていれば良いのだが。


0765.
世俗の人として語ろう。———差し迫った危機は確かに存在する。我々の目の前で白昼堂々途方も無い、実に法外なデタラメの数々が行われている。だが、そのデタラメを指弾する声もまたデタラメであることなぞ、よくあることなのだ。だから普段から心を常に移し変えていられる様にしておいて、万人が足元を掬われたとしてもそれで自分が引っ繰り返ることが無い様にしておこう。平静から一歩退いて、批判の為の余地を必ず残しておくのだ。若し君が多少なりとも合理的に考え、行動したいと望むのであれば。出来の悪い末法思想はお呼びではない。


0766.
 襲い来る愚昧を嫌悪はしても逃げるな。
 身ぬちから溢れ出たる愚昧に嘔吐しつつも直視せよ。
 この地上にはどうにもならぬ愚昧もあるが、どうにかなる愚昧もあることを忘れるな。
 もっとましな世界に、もっとましな世界に、我々は生きて行ける筈なのだ。
inserted by FC2 system