0732.
子供:最も悪質なヴァンパイアの一種。通常、筆者の与り知らぬ不可解な過程を経て女性の体内に寄生する形で発生する。その女性は寄生が判明した時点で周囲の人々から「母親」と云う蔑称で呼ばれることになるが、子供が多大なエネルギーを吸い取る為、体は奇怪に変貌し、元々問題の多かった精神に明らかな異常を来す様になる。その為幾つかの賢明な社会では、「母親」は通常の共同体の成員からは目の届かない所へと隔離される。寄生の深甚な影響はその女性と(つが )いになっている男性にも及ばずにはおかず、間接的に多大な生命エネルギーと時間、そして金が消耗し尽くされる。通常十ヶ月程経過すると体内寄生から体外寄生へと移行し、それまで以上に多くの吸精を行う様になる。*運良く体内寄生をしている内に死亡してしまうものもあるが、体外寄生の段階にまで至ってしまった場合は下手をすると数年から数十年も寄生が続くこともある。同じ女性に二度以上子供が発生する場合も往々にしてあるが、その場合は子供達の間で熾烈な餌の奪い合いが行われることになる。滑稽なのは子供がメスだった場合で、体外寄生を始めて通常十数年以上を経ると、またしてもあの不可解な過程によって、その子供自身達の体内に別の子供が発生することがある。子供による被害を最小限に食い止める方法として現在のところ最も有効視されているのは、貧困と、子供の権利条約を無視すること、だと言われている。

*体外寄生を行う際に採られる形態は、屡々女性乃至その番いの男性、或いは全く別の男性の形状に酷似することが知られている。


0733.
家族:最低二人の奴隷から成る共同体の最小単位。構成員の搾取される権利、生命乃至生命力を奪われる権利は、その家族に於けるエンゲル係数の上昇と共に拡大する。


0734.
食事:1)主に自分とは異なる種族に属する生き物の屍体、或いは殺した後に何等かの虐待を加えた屍体を、口腔内に詰め込み、エナメル質の外装を施した硬組織を用いて切り裂き、押し潰し、二種類の酸で灼き尽くし、蛆や植物の為の餌に変換させること。
 2)共犯者同士の親睦を深める為に行われる乱交の一種。


0735.
企業:国家ではなく民間が経営する軍隊。国家による軍隊との主な相違点は、人を殺すのに直接的にではなく間接的手法を長時間掛けて講じるところにある。但し国家による軍隊と同じく、時には無論例外が起こったりもする。


0736.
初っ端から酷くげんなりさせられる朝———それも、極く詰らない理由でげんなりさせられる朝には、その儘Uターンして再び寝床へと潜り込みたくなる。だがそれが許されない。眠りを満喫出来ない人生なぞ、半分以上死んでいるも同じだ。
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