0697.
「アラビアのロレンス」が言った様に、我々の限界を定めるのは肉体だ。だが、その事実を易々と受け容れてしまっている振りをしてはならない。但し、これは飽く迄「振り」であって、その辺の匙加減を間違えると、どうにも見苦しい事態に陥る羽目になる。


0698.
未知のものは、唯単にそこに存在しているだけでは恐怖の対象とはならない。それがこちらへ接近して来て、こちらで触知可能な圏内にまで入り込み、こちらでそれなりの反応を行為によって示さねばならなくなった時になって初めて、未知のものは恐怖の対象たり得る資格を持つ様になる。


0699.
あらゆるものに付き纏う既知感………厭なら徹底して無視してやろうと努めることだ。気にしない様にする為にあらゆる手立てを講じることだ。無知の重さに圧し拉がれていた方が、何もかももう知り尽くしてしまったと云う無力感に苛まれているよりはずっとましだ。嗚呼! だがこのどうにも遣る瀬無い無為の倦怠………。


0700.
物事を決して額面通りに受け取るな。常により大きなコンテクストの中に組み入れるように努力せよ。君の知性は一体何の為にあると思っているのか。


0701.
分解の過程は成可く効率良く、出来るだけスマートに。何、一旦習慣化してしまえば後は自動的な反応だ。


0702.
代償行為としての摂食行動———そのお陰でこんなにも丸々と肥え太ってしまった。しかも結局、満たされぬものは満たされぬ儘に留まるのだから世話は無い。


0703.
如何なる存在者にも囚われるな。君を捕えても良いものがあるとすれば唯ひとつ、それらの背後に在り同時にそれらの彼方に在るものだけだ。


0704.
ジャングルに棲んでいるのは動物だが、コンクリートジャングルに棲んでいるのは(ケダモノ )だ。もっと性質 (タチ )が悪い。
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