0639.
サービス満載のチェーン店の中に入れば、人は一定度が暗黙の命令さえ守っていれば、無力で無知な幼児であることを許される。世界中にコーラとハンバーガーがウジャウジャ溢れ返ってゆくのは、その結果なのか原因なのか。


0640.
誰もがこの茶番に参加しなければならない。だが、だからと云ってそれでこの私が慰められる訳でもない。


0641.
仮令何重もの間接的な手段によってであれ、自分達が然程同情心をそそられない他人を殺したり抑圧したりしてしか自分達が食べてゆけないと思い込むのは、想像力の貧困によるものか或いは欺瞞に他ならない。必ず他の道がある筈で、耳を傾けさえすれば既に示されているものがあることにだって気が付く筈だ。


0642.
愛国心:「奴隷根性」を現代風に言い換えたもの。経済的・社会的困難に対する無策と想像力の欠如に起因する疾病のひとつで、状況によっては時に強い伝染性を持つ。


0643.
 不在を埋めることに没頭する………。
 だが誰の不在を?
 当事者が全く与り知らぬ儘、事態はどんどん進行して行く………。


0644.
ein Bestehend、a Being、つまり、「存在-している」具体的な個物一般と云う意味に於ける存在者(「者」と云う言葉を使うが人称として用いている訳ではない)の、特に生命の形(ここでは心的なものではなく、物質的な、物理的に測定・観測可能なもののみを指す)の通常からの逸脱や違反は、形あるものに囲まれた我々の日常への侵犯と云う形で現れる。我々はそにれに恐怖するが、往々にしてそれは様々の生理的反応をも伴う。
 「存在-する」と云う事態は、それらの形の背後で、それらを遙かに凌駕する。力を以て控えていて、それは時としてこちら側へと横溢して来る。それはその瞬間に於て強力な現実性と普遍性とを持つことになるが、しかしその普遍性とはその個別例が拡散または拡大し、或いは延べ広がると云うタイプのものではなくて、寧ろそのそこで起きている事態に普遍化され得るあらゆる世界内的事象を取り込み、収斂させ、縮退させてしまうと云う形で実現されるものである。それは丁度、私と風景との間に介在して来る他人の視線の様なもので、全世界がそこへ吸い込まれて行く絶対の真空の如きものである。〈存在〉の過剰がそうした侵犯と云う形で現れる時、それはひたすら異常で、唾棄すべき、悍ましいものでしかなくなる。
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