0625.
テレビのリモコンのスイッチを押す様に、今直ぐ何もかもさっぱり終わりにしてしまえたらいのだが。何だってこんな糞面白くもない低視聴率番組に何時までもだらだらと付き合っていなければならないのか。


0626.
また憂愁が遣って来た。諸手を挙げて歓迎する、と云う訳には勿論いかない。星辰の彼方まで自分のことを蹴飛ばすか、何もかもうっちゃらかしてベッドに潜り込むかしたい気分だ。そのどちらも出来ないので取り敢えず、魂そのものがつるりと滑り出てしまいそうな溜息をひとつ吐いてみる。………糞食らえだ。


0627.
無駄で無駄で無駄でしかない時間をどうしても過ごさねばならなくなった時、秘かに悪態を吐く以外の一体何を私に期待出来ると云うのか。そしてそれがその上不様なものでもあったらならば、それに呪詛を上乗せするのには十分な理由が得られる。


0628.
畜生、また目が覚めやがった! 静かに布団に包まってその儘冬眠でも出来ればまだマシなものを!


0629.
星辰の霊気を吸い込むなどするには些か散文的に過ぎる朝だった。ところが、夜ベッドに入ってしまうまで状況は全く変わらなかった。これでは、私が唐突に首を(くく )りたくなったとしても誰も責める者はおるまい。


0630.
群集の直中で惨めな孤独を愉しむ。———丁度そう、歯茎に出来た口内炎を舌でれろれろと舐め回す様に、発狂までには後一歩と云ったところだ。


0631.
目を開けてみる。………何だ、世界はまだ存在しているじゃないか。どうなってる。責任者を出せ、責任者を。


0632.
この憂愁を満たしてくれる言葉を探して、何冊も何冊もの書物を引っ繰り返した後で、また新ためて思い知らされるのだ、それは未だ書かれぬ自分自身の言葉の中にしか無いのだと。………そして思うのだ、若し全ての書物がこんな具合なのであれば、万巻の書物を著してみたところで、結局一体何になるのだろうと。だが今は目の前の急場を凌げればならない。このどうにも仕様のなくなってしまった宇宙をもう少しまともな姿に直してやらねばならない。そして私はペンを手に取り、こうして益体も無い言葉を書き連ねているのだ。
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