0520.
良き政治家の第一条件:憲法の精神を遵守すること。

 ………こんなことを書いていると情け無くなって来る。


0521.
外の世界で何が起きているのか見ようとも考えようともせず、ひらすら(セックス )暴力 (バイオレンス )の細かな差異を消費し、丸々と肥え太ること………それが、今日の良き市民達に課せられた至上の務めである。


0522.
若し戦勝国が自分達の手でワシントン裁判の如きものを開くだけの良心と良識があれば、東京裁判は不当で無効だなどと云う不毛な意見をぴしゃりと黙らせることも出来たのに。


0523.
家族と云う名の他人に囲まれ看取られて死ぬなんてまっぴらだ。死は一人で迎えるものだ。幾ら私ではない者達の一部が私の為に一緒に死んでくれるからと云って、それで私の全体性が回復される筈のものではない。取り零しは常にあるのだ。


0524.
全てが腐敗してゆく町で私は生まれた。全てが静かにどろどろに融けてゆく、だが決して風化はしない。忘却がその上に幾重にも瘡蓋 (かさぶた )を成そうと、その禍々しい形そのものはしっかりと残り、年を取るにつれて益々いびつに、意地が悪くなってゆく。肺腑の底までぼろぼろになり乍ら、やっとのことで私はそこを逃げ出した。誰がもう戻ってなぞやるものか。


0525.
いや、君が言うところの「バブリーな残り香」の悪臭加減については、私もよく知っている。目的の見えない儘駆り立てられて行ったバカ騒ぎと云うものは一度味わってしまうとそう簡単に忘れられるものではないからな。私が中でも一番気に食わないのは、目が覚めて尚あの夢が忘れられない、と云うのではなく、目が覚めるどころか益々深い夢にずっぽりと嵌り込んでゆく、そうした者達が余りにも多いと云う点だ。その儘何食わぬ顔をして適応してしまっている連中が大勢いることは承知している。だが少なくとも、私はそうではない。


0526.
 医者になるには覚えが悪過ぎるし、また肉体が邪魔をする。
 教師になるには人間に関心が無さ過ぎる。
 自然科学者になるには辛抱が足りなさ過ぎる。
 結局、私は、私以外の何にもなれぬ儘ここまでずるずると来てしまったのだ。
inserted by FC2 system