0513.
つまらぬ俗事がまた私を疲れさせる。気が付くと私もつまらぬことに戦々兢々のちっぽけな俗人になっている。一度この状態に陥ってしまうと、そう簡単には抜け出せない。そう云う時は無理をせず、素直に食べて寝てしまうに限る。バランス感覚のまともな精神の持ち主ならば、自分の精神力ではどうにもならないことがあることを弁えておくものだ。目が覚めればまたもう少し正気に近付いている自分を取り戻せるかも知れないと期待してあっさり降参する。但し期待し過ぎてはいけない。自分が要するに形而下的な下衆野郎の一人で、小狡くて臆病な小心者でしかないことを思い知るにはいい機会だ。


0514.
少年よ大志を抱け。但し自分の分を弁えろ。


0515.
 医者は現在の為に奉仕する。
 教育者は未来の為に奉仕する。
 数学者や一部の自然科学者は永遠の為に奉仕する。
 どの役割にもそれぞれの誇りがある。


0516.
今日のグローバル化の根本的な問題のひとつは、先進国の大多数の人々の頭が、まだグローバル化と云う事態に充分に調整されていないと云うことだ。国境などと云う余計なカテゴリーのお陰で、実に多くの問題が、単なる国内問題、地方的問題として看過されてしまっている。


0517.
概して勝者と云うものは、勝利の陰でどれだけ犠牲になり踏みにじられた者達がいるかと云う事実なぞ目をくれようともしないし、またその「勝利」が、公平な条件の下での競争によって勝ち取られたものであるのかどうかについては、そもそも考えてみようともしない。戦略、戦略、戦略、要するにゲームに勝つことだけが彼等の頭を占める唯一の関心事である。


0518.
クザーヌスが書いた眼差しについての文章を読んで口の中で毒吐く、「このファシスト野郎奴!」。何故だろう、私もそっくり同じことを考えていたと云うのに。


0519.
まるで売春宿からこっそり出て来たところを見知らぬ相手に目撃され、ニヤリと口の端で笑いかけられた様な気分にさせられる本を手に取ってしまった。それに対する私の反応はと云えば、恥じ入るなんてとんでもなく、この野郎ぶっ殺してやろうかと云う逆上と、ふん、お前なんか絶対に私の本棚には置いてやらんからな、と云う強がりだけだった。

 ………くそッ、また頭痛が酷くなって来た。不快だ。実に実に不快だ。
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