0428.
広い敷地の中をちっぽけなボールがあっちへ行ったりこっちへ来たりする。成程、自分が人生を楽しんでいると思い込む為には、これだけのバカバカしいことにも没頭出来る才能が必要なのか。確かに、反省能力を持たない人間の方が、ブタの様な幸福を獲得し易いのだろう。


0429.
公民としての倫理的な言動の中に秘められた心理的危うさを、私は決して見逃してはいない積もりだし、無視してもいない積もりだ。だがだからと云ってそれを理由に行動から退避し、高みの見物を決め込むことは許されない。我々の内面がどうあろうと、この世の中には片付けねばならなぬ問題が山程あるのだ。恐らく私とは正反対の立場に立つ人々も、これと似た様なことを考えているのだろうと思うとぞっとしないが、我々が自らの将来、そして次の世代に遺さねばならぬのは知の躊躇いではなく、知が獲得し達成した形ある何かなのだ。


0430.
賞味期限が切れた食品が何処へ行くのか、その行く末を一度でも目にしたことがある者ならば誰だって、その正気を疑ってみたくなるのが当然と云うものだろう。


0431.
人殺しを正当化してしまう………と云うより、正当性を問うと云う行為自体を無意味にしてしまう一篇の曲———そうしたものを、私は心底憎む。時によっては義務としての憎しみが、愛情を追い越す程に。


0432.
出来不出来はともかくとして、遠い愚行は喜劇となり、近い愚行は悲劇となる。そして近過ぎる愚行は唯々うんざりさせられるだけの代物だ。


0433.
出来不出来はともかくとして、遠い愚行は喜劇となり、近い愚行は悲劇となる。そして近過ぎる愚行は唯々うんざりさせられるだけの代物だ。


0434.
一箇の思想や信条を発表するのに、戦争中ならばともかく、戦術的な発想を根幹に据えることを私は好まない。人類は、在りの儘の言葉に向き合う術を学ばねばならない。表明されるものに初めから裏側があってはならない。人類の未熟さのツケは、人類が自ら気付いて自発的に払わねばならぬのだ。何時までも親心を持っていては、大衆は何時まで経っても自立して思考を始めることが出来ない。
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