0409.
自分の魂の深淵を覗き込むこと、自分を外へ連れ出してくれるものを探すこと………重要なのは、両者の間の振幅を可能な限り大きなものにすることだ。出来るだけ高く、深く、広い世界に住もうとすること———これは謂わば精神の本能であり、権利であり義務である。


0410.
soundとfuryがぎらぎらと漲った世界に私は住んでいる。だが、己の感覚さえしっかりと意識していられるなら、大抵の場合はどうと云うこともない。


0411.
無見識で無能であるばかりではなく有害ですらある政治屋共、その地位と人気があらゆる言動の言い訳になってくれると本気で勘違いしている利権屋共、そして連中に好きな様に自分達の上に権力を行使させている底抜けに間抜けな国民共、自分達の過去と未来と現在について自分達の頭で徹底的に考えてみようとしない浮き草共。


0412.
常にその発言が為された具体的な情況を思い浮かべること、切り取られる前の全体と云うものを仮定すること、あらゆるものにはコンテクストが介在することを念頭に置いておくこと、解釈の場に於ける言葉の貧困と思いもかけぬ多産とを同時に視野に入れておくこと、記号論を倫理学と見做すこと。


0413.
カルシウムの足りなさそうな俗人の所為でまた気を散らされる。地球は自分達を中心に回っているのではないと云うことを、一体何時になったら連中は悟るのだろう。………恐らく、「死ななきゃ治らない」んだろうな。


0414.
告白表明されるものとしての行為として、善や規範からの違反・逸脱としての悪の愉しみは、主として回想の裡にある。行為はそこで、いずれ回想されるであろうものとしてのはっきりした輪郭を獲得することになる。善の場合はもっと事情が複雑になる。善は分裂を好まない傾向にあるからだ。「〜すべからず」と云う命法が与えられている場合、意識(consciousness)は良心として機能するかも知れないが、心の分裂と云う事態それ自体は悪の温床としての必要条件を充分に備えている。「〜すべし」と云う命法の場合、善は自らの輪郭を自力で決定せねばならず、ここでもまた対自的な反命法を(暗黙の裡に)必要とすることになる。


0415.
緊急避難としての読書。この世は堕落の種には事欠かない。
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