0363.
この世界は狂っている。無理もない。我々全員の母親の殆どが多かれ少なかれ狂っていたのだから。さもなければ我々を生もうなどとはしなかった筈であるから。


0364.
私は普段余りにも大勢で暮らすのに慣れているので、比較的自由度の高い環境に於ける時間内では、時々、自分にはひとつの名前、ひとつの顔、ひとつの肉体しかないのだと云うことを忘れてしまう。時として自分の名前が咄嗟に出て来ない、等の原因の一端はここにあるものと見ていいだろう。国民一人ひとりの生活を守ってくれない政府と同じことで、余り有難くないものは得てしてその記憶を何処かに置き忘れられるものなのだ。


0365.
選挙:国民の阿呆さを測る為に時々実施されるアンケート。やってもやらなくても大して違いがある訳ではないが、毎回同じ様な結果が出るのでその無害さ故に放置される。


0366.
自分の行為を絶対に正しいと信じて愚行を為す者はまだいい。そんな者は後で後悔でも何でもすれば済むだけの話だ。愚行を愚行と知りつつ、それでも他にどう云った選択肢も思い付かぬので愚行を為す者、即ち予め後悔だの悔悟だのを済ませてしまっている者は、一体どうすればよいのだろう?


0367.
安直なリビドー解釈を信じたくなる朝もある。


0368.
幸福感、つまりは先取りされたノスタルジー。我々は皆こことよく似た異世界からやって来た。唯ひとつ違うのは、現在進行形の中に含まれる予定の有無だ。


0369.
温暖なのは別に構わない。寧ろ結構なことだ。問題なのはこの湿気だ。じくじくしたこの湿った大気が、この列島からsolidな形を取ろうとするもの全てをぐじゃぐじゃにして奪い去り、台無しにしてしまう。
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