k-m industry
0321.
夜寝床に入る度、今日一日の「おつとめ」がこれで終わるのかと思い清々する。だが同時に、明日もまた新しい「おつとめ」に服さねばならぬのだと思いうんざりする。斯くして、休息としての睡眠は悪夢に彩られることになる。


0322.
「私をもう一人作ってみる」こと程効果的に時間を潰せる暇潰しはそうそうあるものではない。しかも、その際に発生する「もう一生分の暇が出来てしまう」と云うリスクは、自分で負う必要が無いのだ。貧乏に追われている訳でもないのに、世の親達がせっせと子作りに励もうとしてしまうのも仕方の無いことかも知れない。


0323.
私にとって、世界は毎日常に新鮮だ。佇み揺れる不安に、飽きもせず襲い来る退屈。これらに慣れてしまうことなどあり得ないからだ。


0324.
退屈は常に新しい———唯、何等素敵な感慨を呼び起こすことがないと云うだけの話だ。


0325.
自分が常に森羅万象の一部であること、同時に、私が森羅万象であること、そして何より、森羅万象が私であること———これらを忘れさえしなければ、下らぬ過ちに気を取られることもない。


0326.
結婚と云う形式によって制度化された嫉妬は余りにバカバカしいので、真っ当な欲望を惹起するだけのポテンシャルに欠ける。そんなものはそれこそ犬だって喰いはしない。従って外部からの侵犯のみが素敵な感情と成り得る。


0327.
本当にずっと一人で居る時には、孤独は感じる必要がない。その時私は自足に近い状態であって、問題となるのは世界全体だけだからだ。孤独がより深まるのは、他人の視線を受けている時———それも、特に好意的な視線を受けている時だ。孤立して四面楚歌の時の恐怖と比べればどうだろうか。言うまでもなく後者の恐怖の方がより根源的で、強烈だ。孤独は、それよりもより人間らしい苦悩だ。謂わば贅沢な嗜好品の一種なのであって、内側へと分け入る為の良い契機となってくれる。人によっては、それが世界の全ての始まりとなることさえある。
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