0258.
 刑務所の囚人と云うものは、他人を殺したり何等かの形で他人の人権を犯したからそこに居る。
 軍隊の兵士と云うものは、これから他人を殺したり何等かの形で他人の人権を犯す為にそこに居る。
 どちらがよりタチが悪いかは、無論、一目瞭然である。


0259.
無論、賃金労働者と云うものは、殊に他に選択肢が残されていない場合に於ては、どんな素晴らしい認知的言い訳を当て嵌めてみたとしても、詰まるところ奴隷なのである。してみると、その根性に於て奴隷と呼ぶに相応しい者が、特にカネを持った者と、最低賃金で働いている者に多いと云うことは興味深い事実である。


0260.
君、飛行機に乗って窓の外を眺めてみたことがあるかい? 始終空を飛び回っている支配者共が、何か酷い勘違いをしたとしても、あれでは仕方ないと云うものだ。


0261.
私は言葉に支えられて辛うじて生きている様な人間だ。だから、頽落したロマンティシズムの残骸をちょろちょろと見せられると、うんざり遣り切れない心持ちにさせられてしまう。
 しかも厄介なことに、洗脳済みの人間と話をするか観察するかして先ず判ることと云えば、彼等は自分達が洗脳されているだなんてこれっぽっちも考えていないし、考えてみたことすらないと云うことなのだ。


0262.
栄養が行き過ぎている為か、散文化したゴミの様な情報を日々大量に強制摂取させられている(だが外見は自発的行為に見えるところがミソである)為か、性別が雌である子供達は、極く短い少女期間を経た後、一足飛びに中年女に成り下がってしまうが、中には中間段階をすっ飛ばしてしまう者も多い。


0263.
「multitude」を写していると云う写真家に会った。彼女の写真に収められていたのは、大都会の雑踏だった。確かに、大勢の人々が密集していれば、それは確かに「多数」に見える。が、若しそれが本当に「全世界の大多数」を構成していると主張する積もりなのであれば、彼女は酷い偽善を冒していることになる。本当に大多数者を写したいのであれば、アフリカへ、インドへ、中国へ行くべきだ。それも都会ではなく、都会の恩恵面を受けられない所へ。彼女はそうすることによって、北半球の一部の富裕層しかこの世界には存在していないかの様な幻想をはびこらせることに手を貸してしまっているのだ。
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