0196.
実写映像の中のCG映像に見られる奇妙な不在感———それは画面いっぱいを埋め尽くしてみたところで尚埋めることは出来ない。だから増々埋め尽くさなければならなくなる。


0197.
国歌を疑問視する者がいることを問題視するよりも、疑問視される様な国歌があると云うことの方が問題だ。
 国民の一体感を高めると云う意味に於ける国威発揚の道具としては、日本の国歌はとりわけ貧相な役立たずである。尻切れトンボで息切れをしてみたところで、今の日本人のどれだけが日本人らしく心を鎮めることが出来るか疑問だし、またそれではあの何でも誤魔化してしまえる高揚感は得られない。
 第一国家間レベルでお祭り騒ぎが必要になるのはオリンピック位のものだが、しかしそもそも真面目に人類の未来について考えようとするならば、国旗等は単にその国籍を示す為の指標でしかなくなる様な時代———そんな時代をどうしても求めてゆかねばならない。恣意的で地方性への熱狂的な偏執は、百年前ならば戦争を引き起こす一大要員となったところの愚昧でなくて何であろう。


0198.
私には、私の官能を切り刻んでしまえるだけの度胸はない。だから何時だって私は消化不良に悩まされることになる。


0199.
あの途方もなく整然とした美しい雪の結晶が、一時に何億何兆も、それこそ無数に何時間も降り続けるなんてことが、私にはどうしても信じらん。美には、適切なレベルと云うものが必要なのだ。自然のやることは食傷を遙かに通り越している。


0200.
国民を無視する政府には困ったものだが、それについての合理的な釈明を政府が公表しようとしない、またその努力の片鱗すら見せないのは更に困ったことだ。言い訳は品性のバロメーターである。偽善は悪だと言う向きもあるかも知れないが、見掛けさえ気にしなくなった政治家に、一体何の価値があると云うのだろう?


0201.
「本屋に入った若者は、本をではなく自分の人生を探して(それとも「選んで」だったか?)いるのだ」とは、昔何かの本で読んだ誰かの言葉だが、今日私は家からそう遠くない揃えのいい古本屋で、いい本を安い値段で手に入れることが出来た。これはもう、何かの啓示ではなかろうか。
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