0182.
私はよく明確な理由もなく憂鬱や不安に襲われるが、君(川流)はよく明確な理由もなく笑い出す。どちらも皮肉と無縁の単純明快な人生は送れそうにないが、どちらがより「不健全」っぽいかと云えば、それは君の方に決まっている。


0183.
茶碗に白いご飯をよそっていると、時として急に泣き出したくなることがある。今だに人類の大部分は、終局的にはこんなものの為に貴重な活動力を浪費しているのだ。何と途方もないことだろうか。


0184.
資本主義は効率のみを追求するものだと云う見解は間違っている。大量の無駄なものを「効率的に」生産しているこの馬鹿馬鹿しい現状を、一義的に「効率的」と言うことは出来ない。人類の無能がその存在を今だに許している多くの職業は別に資本主義下でなくとも存在するが、ひたすら新しい無駄を作り続けないことには存続が出来ないシステムと云うものは、「成長と発展」に取り憑かれた人間でない限りは、凡そ愚かしいものであると認めるのに吝かではないだろう。しかし単なる膨張と枝葉に於ける無意味な多様化を成長と発展と取り違えている限り、人類が持続して未来へ世代を繋いで行くことは出来ない。「何の為に」と云う問いを目の前の文脈から離れて見る術を覚え、そしてそれを習慣としなければ、自分達が今していることが大局的には如何に非効率的で、未来の世代にとっては途轍もなく無意味な徒労であるかを心底悟ることは出来ないのだ。


0185.
泣き出したくなる様な気怠い官能が疲労、それも極く下らない類いの疲労、知的な悦びも精神的な満足もない、掃いて捨ててしまいたくなる様な疲労と共に、今日も私の身体を包み込む。うんと甘いアイスクリームや暖かい寝床の官能さえ、これを完全に同化してしまうことは出来ない。私がこの世界を恨めしく思うのはこう云う時だ。


0186.
念の為に断っておくが、私の日常が全て解釈学的循環に陥っている訳ではない(そんな事態になってしまったらマトモに生活を送ることなど不可能になってしまう)。私とて思考を停止すべき時位は心得ている積もりだ。
inserted by FC2 system