0166.
マジメに生活をしているフリを続けていると時に疲れる。特に、金の無い時には。世界が昼下がりにボーッと眺めていられる茶番である裡はまだ付き合ってやってもよいが、胃袋を満たす為に強引に下らぬ役を回され何か阿呆らしい台詞を長々と言わなければならないとなると話は別だ。何故私がこんなつまらぬ舞台に、と一度気にし始めると、次第に腹を立てることにするかみじめになることにするか、それ以外の選択肢が次々と消えてゆく。


0167.
満たすべきふたつのものが存在する。胃袋と魂だ。ひとつは文明を形成する集団として、ひとつは諸個人として、人類にはこのどちらも欠けてはならない。


0168.
無知は一般的に言ってひとつの不幸である。しかし力あるものの無知はひとつの犯罪である。


0169.
ペンは剣よりも強し。パンはペンよりも強し。


0170.
使い古された譬えではあるが、外交を含めた政治力の無い国家が充分な装備と組織を備えた軍隊を持つのは、まだ右も左も判らぬ子供に本物の拳銃を持たせるのと同じことで、凡そロクなことの起こる筈がない。ほんの一世代前には世界滅亡の脅威が一体どれだけの迫真性を持っていたのか、世界がほんの少し経験から学んでそれを口にしなくなった途端、喉元過ぎれば何とやらで貧相な教訓も何もかも全く忘れ去ってしまっているのがいい証拠だ。拳銃をナイフに持ち替えたから安心だなどと考えるのは愚の骨頂、ナイフでもしっかり人は殺せることが解っていないのだ。況してや他の子がみんな持っているから自分も持ちたいなぞと云う理由は論外の言語道断。次に流されるのはたまたまそこを通りすがっただけの哀れな犠牲者の血かも知れないし、その子自身の血かも知れない。その子が武器を手にしている限り、要らぬ血が流される可能性は決してゼロにはならないのだ。その子から危険な玩具を取り上げることの出来る大人が唯の一人もいないとは、何とも背筋の凍らされる話ではないか。


0171.
電話:他人同士を2人背中合わせに縛り上げ、小さなロッカーの中に閉じ込めて会話させるのと同様の効果を簡単に生み出すことが出来る拷問用具。視野狭窄機能がある為、主に知的マゾヒストや世界観的広場恐怖症の者等が主たる利用者となる。耳栓としても利用出来ると共に、自分自身の小さな領域で忙しく立ち働いていて「暇がない」と云うポーズを装うことが容易になり、自分以外の一切に対して無意味だが効果的な言い訳をすることが可能となる為、一部の地域では「携帯電話」乃至略して「携帯」と呼ばれる携行型の電話の中毒に陥る者が多い。飲酒と同様、そもそもこれが病理現象として認知されることが極めて稀である為、これを根絶するには非常な困難が伴うことが予想される。
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