0144.
国民の権利と義務と、どちらを優先させるべきかと聞かれたら、それは権利の方に決まっている。個人の諸権利に若しひとつだけ優越することが可能な公民的義務があるとすれば(これとても保証の限りではないのだが)、それは人類への義務であって、国家へのではない。


0145.
不意に訪れる無為は、まだすべきことがあることを思い出す機縁となる。


0146.
日本国憲法九条を守ろうとする意見に対して、私は半分しか賛成出来ない。何故ならそうした意見には、九条の理念を貫き通す為に死ぬ気で外交を改善しようと云う必死の覚悟が見られないのが普通だからだ。日本一国だけで戦争放棄を謳い上げたからと云って、何処までもどんな情況でもそれで押し通せる筈がない。国際世論の圧倒的な支持立てがあってこそ、空手で大国同士の駆け引きの場に乗り込むことが出来ると云うものだ。理念のない政治や理念を誤った政治には、やがて歴史の裁断が下るだろう。だが現在の中を生き残ってゆく為には、強かでなくてはならない。


0147.
歴史的な含みを別にすれば、私は日の丸が大好きだ。何故なら、現時点に於ける世界中で最もシンプルなデザインをした国旗だからだ。


0148.
文字通り最低の人間と云うものはそうそういるものではない。もっと酷い連中なぞ幾らでもゴロゴロしている。だが、軽蔑に値する人間はワンサカいる。私は彼等と笑いを共にするのを好まない。


0149.
この世に共に語らうに値する人間など殆どいはしないのだ。それが解っているから私だって滅多なことでは贅沢は言いはしない。だが、どんな類いのウジ虫野郎と席を共にするか位はこのウジ虫野郎自身の好みで決めさせて欲しい。


0150.
単なる知的な理解を峻拒する倫理、理解と同時に受容と参加を強制するウェットな倫理、こうしたものの広く深い蔓延が、私と同類や近親類の人間が自ずと疎外感を感じつつ少年期を過ごさねばならないことの原因の一端であろう。考えねばならない時に感じることを要求されることを繰り返しているのでは、成人した頃にはすっかりやさぐれてしまっている者が出て来るのも無理のないことではなかろうか?
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