0011.
時が大衆の時代になり、大衆の娯楽が技術的、資本的に強力な伝播網を獲得して以降、「恋愛はどんなバカでも謳歌することの出来る人生の調味料である」と云う罪な茫漠とした夢を大衆に降り撒いた所為で、それまでは必要のなかった無数の失敗者、落伍者達が生み出されることになった。
 私の様な者が恋愛についての否定的な見解を不用意にうっかり披露しようものなら、常識がないとか、人生についての見方が狭いとか、果ては私に、色恋沙汰で何か嫌な経験があるのではないかと疑われてしまう。馬鹿馬鹿しい! ハリウッド映画ではあるまいし、過去の何等か「実体験」とやらによって思考のレールが全て挽かれてしまう程、私は単純ではない!
   これは不愉快だが、不幸にもそうした条件に当て嵌まる連中には、同情と思い遣りを持って接してやらなければならない。何故なら彼等はつまるところ、病人だからである。———但し心から同情してやる必要はない。自分が狂っていると云う認識さえ持ち合わせない想像力の欠如した連中には、何を言っても無駄である。敬して遠ざかるのが一般的には正解である。


0012.
今だに殆どの人類に於て、子供は最大の潰しとして有効である。


0013.
殆どの人類に於て、子供を作り育てると云うことは最も有効な退屈凌ぎだが、どう育てるかと云うことに比べれば、どう作るかと云うことはそれ程重要であると云うことを銘記しておいて貰いたい。幸福かどうかはこの際二次的な問題だからである。世のこの手の不幸の大部分は、この点を勘違いしているところから来る。


0014.
果たして我々の世代に於ては、肉体とは克服すべきものだろうか、それとも、単に無視すべきものだろうか、それとも四方八方手を尽くして飾り立て、雪の下の掃き溜めの様に埋めて隠してしまうべきものだろうか?


0015.
たまには幻滅と云うものを味わってみたい。
………それだけの気力が残っていればだが。
断っておくが、単に疲れること幻滅することは全く別のものだ。


0016.
 問「何故我々はかくもブザマにヒイコラ言い乍ら生きてゆかねばならないのか?」
 答「若し特に夕食の約束でもしているのでないならば、生きてゆく必要はない。意味のない死を迎えることも、意味のない生を送ることも、君にとって同じものであるならば、わざわざ苦労する道を選ぶことはない。若し同じでないならば、阿呆らしいのは私は答える気にはなれない。どうか勝手にやってくれ給え。他人の愚痴を聞いている程私は閑ではないのだ!」
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