包囲され自分の位置も判らずに
  途方に暮れて腕を抱き締める



ひたひたと日は落ちて行き六月の
  風はぞわめいて山を駆け抜ける



気が付けば裸の儘で寒風に
  晒されている私の身体 (からだ )



笹薮を漕いでばかりで先が見えず
  何時しか道が消えて行く消えて行く



直前で呑み込んだ悲鳴の塊が
  喉につかえて吐きそうになる



道の端を追われる様に走り乍ら
  昂然と低く頭を構える



ぱんと撃つ音に驚き発つ鳥の
  目に映るのは如何なる自由か



空腹に一個の胃袋と化す躯
  等身大が妙に心地良い



初夏の風が汗を蒸発させて行く
  愚昧は尚も居残るけれど



山怪にのっと出遭ってその余り
  自然な様子に幻滅を見る



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