今までも異世界に住んで来たのだと
  歯を食い縛って愚昧に耐える



なだらかな下りの傾斜を愉しんで
  その先の地獄が目に入らない



カナリアに成った気分で炭鉱の
  煤けた視界に叫び立ててみる



人間に成り損ねた様な残骸が
  獣と化して街を喰らって行く



手の中の湿気たマッチを見下ろして
  吐く溜息に愚昧の冷気



一人だけ取り残された祭の後
  踏みにじられた芽をそっと撫でる



見慣れた廃墟寸前の街並みに
  不穏の卵がぱかんと割れて



誰知らず開けた窓から野晒しの
  髑髏の哄笑が秘めやかに舞い込む



一面の白に意識が遠くなる
  今朝の頭痛は何の谺か



解放の約束は未だ果たされずと
  轟けとばかりに月に吼える



inserted by FC2 system