耳鳴りを抜けて視線の向こう側
  現実と云う名の虚構が嗤う



焦点を結ばぬ儘の空言葉
  電線の上を影が駆け行く



泡のごと日に照らされた箱庭の
  中にたゆたう祖国喪失者



花束に爆弾を詰めておめでとう
  今日は貴方の裏切り記念日



見よこゝに偉大なる憂国者の眠る
  墓標ひとつ在りワラクズのごと



空し夢ばかり眺める白痴の群れ
  違う幻に牙を剝き唸る



生熟れの果肉切り裂くなまくらの
  ナイフもて泣きそうになりながら



目を閉じる光と音と痛みだけ
  流れの中で在る私と空



雲ひとつ無い日没が街の上
  白痴めいた消費者の群れ



翻す旗無き僕等の住まう街
  それでも空を見て雨に打たれる



inserted by FC2 system