夢見れば遠い昨日と成りにけり
  身を焼くまでの知への焦燥



囁きが津波と成って押し寄せる
  午前一時の星の無い夜



後ろ手を組んで議事堂前を過ぐ
  下水の臭いで息が苦しい



逆立った背中の産毛の感触を
  憶えておこう無名市民よ



唯一人ぽつねんと立つ街角に
  全身でその孤独引き受ける



プラカード打ち棄てた後も承認を
  巡る闘争の終わること無し



承認を求め煮え繰り返る「国」
  残骸の上に唯一人立つ



顔色を窺って尚も爽快な
  ビラ配る手の震え愛おし



壊されたものは何なのかと自問する
  卵は未だ孵っていない



もう既に失われていたものを改めて
  失う痛み更に清々し



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